Important Announcement
PubHTML5 Scheduled Server Maintenance on (GMT) Sunday, June 26th, 2:00 am - 8:00 am.
PubHTML5 site will be inoperative during the times indicated!

Home Explore 8夏季編  第3章営業活性化計画〈顧客との心のふれ合い〉

8夏季編  第3章営業活性化計画〈顧客との心のふれ合い〉

Published by office, 2023-04-16 23:19:16

Description: 8夏季編  第3章営業活性化計画〈顧客との心のふれ合い〉

Search

Read the Text Version

第3章 営業活性化計画 ―心のふれあい― 営業計画とは 自然に湧き出る泉の如く 自ずと売れる仕組みを作ることである 151

1.営業とは自ずと売れる仕組みを作ること 「営業とは売上を増やすこと」のイメージを誰もが持っているように思います。 「増収増益」という言葉がある程です。しかし、それらはかつての高度経済成長 時代の考え方です。先の見えない現代においては営業そのものの考え方から見直す 必要があります。 ・営業(セールス)とは何か?と問われた時に何と答えるでしょうか? いかにして売るか?は、営業マンの能力や店舗デザインなどを対象にしています。 ・営業戦略(マーケティング)とは何か?と問われたらいかがでしょうか? 営業マンや価格などの努力ではなく、「会社全体として大きく取り組む売り方」 と答えが返ってくるものと思います。 いずれも間違っているわけではありませんが、もっと深く突っ込んで営業の本質 を捉えると違った答えが返ってくるように思います。 本書では、経営の真理を説明しています。 営業を知識と真理の両面から考えてみましょう。 ・知識では、売ることです。積極的にアプローチするやり方です。 ・真理では、売れることです。売れる仕組みを作ることです。 「売るから売れる」へ、つまり、「営業活性化とは、自ずと売れる仕組みを考え ること」になります。 さて、具体的にはどうすれば良いか?と言うことになりますが、本書では、「経 営とは経営の樹を育てること」と定義し、樹のそれぞれが、己の責任を果たしつつ、 周囲の関係者の情報(情けに報いる心)により、自然に成長していく姿をイメージ しております。 したがって、本章では戦略論や戦術論は避け、心の取り組み方と私の営業体験記 録を基に自ずと売れる仕組み作りを考えてまいります。 Point 自ずと売れる仕組み 経営の樹が成長することが自ずと売れる仕組みです。 ・根=経営理念 お客様に真摯に向かう心を表わす ・幹=経営方針 オンリーワン、商品、サービスの開発 ・一本目の枝=組織計画 社員一人一人がお客様を大切にする心 ・二本目の枝=営業計画 仕える事の徹底 心の触れ合い ・三本目の枝=財務計画 潤沢な資金計画 ・枝葉 社員一人一人のお客様を迎える心 これらが一つになってまとまることにより、お客様に感動を与え、情報となっ て自然な形で売上げも伸びてゆくものです。 152

2.営業の原点は心のふれ合い=感謝から感動へ 営業と一口に言っても、製造業、サービス業、物販業など様々ですが、お客様と のふれ合いについて考えてみましょう。 〈お客様と心のふれ合い〉 1.お客様から心からの支持をいただけなければ経営は成り立たない。売上げを 上げて下さるのは、お客様の心だからである。 2.お客様から支持をいただくには、商品やサービスだけでなく、お客様との心 のふれ合い全てによるものである。 3.お客様は新規に開拓するより、従来からの顧客を大切にしなければならな い。既存の顧客を失うことは、お客様からお客様への情報の連鎖を断ち切る ことになるからである。 では、以下の2つの接し方のうち、お客様を引きつけ、発展するのはどちらでし ょうか? ☞お客様に売ってあげる、という態度で接する。お客様の相談よりも自分や会社の 都合が優先する。 ☞お客様に笑顔で、親身に接する。何か問題が起きると、あらゆる手段を尽くして 解決を図る。 答えは明らか、わかりきったことです。顧客サービスはどこでも行っており、そ れなりのレベルを達成しています。しかし、お客様に満足して頂いたにしても感動 には至りません。 あと一段深いレベルでお客様と向き合う必要があるように思います。 〈自ずと売れる仕組み作り〉 それではどのようにしたらお客様がリピーターとなり、ずっと来ていただけるで しょうか。 顧客になるのは、お客様自身の1回1回の「心のふれ合いの積み重ね」によりま す。それは、奉仕心によって生まれます。その奉仕心がお客様に感動を与え、人 に話し感動を分かち合いたい気持ちにさせることができれば、自然に広がってい きます。このことが、自ずと売れる仕組み作りの原点です。 ❖次頁に、心のふれ合いのあり方をまとめてみました。1つ1つ考えてみましょう。 それぞれ自分自身を振り返りチェックをしてゆくと反省点が見えてくるものと思い ます。 153

お客様との心の触れ合い チェックシート これはある織会円社の滑社化員全1員0が訓経営理念に沿い、仕事をしている姿を見て書き留め たものですが、取り立てて難しいものではないと思います。 1. お客様の立場になって考えている □ お客様が望んでいるものは何か?を常に考え提供している。 □ お客様は、「いつも親身に対応してくれる」と言って下さる。 □ 次回も取引して下さることを考えて対応している。 2. お客様への対応ミスを常に反省、修復する努力を怠らない □ 不審に思うことがあれば、まずお客様の立場に立つ。 □ 社員を信頼し、正しい判断を下せるよう、常に心掛けている。 □ クレームが来るのを待たず、ことが起こる前に欠陥を修正している。 3. 友人のような認識をお客様に抱かせる □ お客様を、古い友人のように対応している。 □ お客様への手紙は、個人的な手紙のつもりで書いている。 □ お客様と最大限の人間関係を築けるよう、システムを整備している。 4. 人間味あふれたサービスを提供する □ お客様と名前で呼び合えるような顔なじみになれるように努力している。 □ お客様との間に、共通の話題を作るようにしている。 □ “奉仕の心で仕える事”を仕事としている 5. 良い意味での意外性により、お客様の関心を引きつける □ 突然のサプライズプレゼントでお客様を驚かす変化を心掛けている。 □ オンリーワンを強化するため、独創的な工夫を心掛けている。 □ 楽しく仕事をし、お客様にも喜んでもらえるように努めている。 6. 社員それぞれの個性を光らせる □ 社員全員が、経営理念に基づいた行動を取っている。 □ 社員一人一人の持ち味により、そして会社全体のオンリーワンを作っている。 □ 顧客満足と社員満足、そして会社満足が一致している。 お客様とのふれ合いについては各社どこでも最優先課題として取り組んでおり、 様々な形ややり方を研究していることと思います。 しかし、なかなか思うように行かないのが現実です。 ❖心と形の両面から考えてみましょう。心は経営理念から導き出される心のこもっ た交流です。形は次頁の感謝ハガキのようなアイディアです。 154

【お客様とふれ合いを積み重ねる感謝ハガキ】 お客様とのふれ合いを大切にする一例としてアンケートに記入されたお客様全員 に発送している感謝ハガキを紹介します。 ↑冬季 ←夏季 “春は花 夏ホトトギス 秋は月 冬雪さえて 涼しかりけり”をテーマにした四 季折々のハガキです。一般のお礼ハガキと違うところは、 ・宛名が手書きであり、本文にもお客様の名前を記入している ・お客様が感動するサプライズを明かさないで必ず実行している ・どんなことがあってもやり続ける この3つが揃ってオンリー1になっている所です。社内においては、定例のPDS会 議にてアンケートに記入されたお客様の声を、1つ1つ丁寧に検討改善を加え続けて おります。 ちなみに感謝ハガキを始めた結果、リピーターが基礎となり、お客様へと広がり 安定した経営基盤を築いています。 Point 簡単なことをやり続ける いかに立派なことであっても、やり続けなければ効果がありません。どんなこ とであれ1つのことをやり続ける重みは、続ければ続けるほど深まり、その会社 のオンリー1になってゆきます。多才である必要はなく、愚直で誠実な経営者で あるほど、粘り強くやり続けます。 これは「消極策を積極的に実行する」代表的な方法です。 155

【お客様とふれ合いを積み重ねる感謝便り】 あるリフォーム工事会社は「ハッピーリセット」をキャッチフレーズにし、お客 様がハッピーになる住まい造りを提案しています。多くのお客様に毎月発送してい るふれ合い感謝便りを紹介します。 ・お客様の声と写真を必ず掲載している ・その月の施工事例を必ず紹介、感謝を表している ・生活のワンポイント、家相ワンポイントを紹介している これらをとてもわかりやすく読みやすくする工夫を重ねています。 A3用紙表裏2面でまとめた感謝便り 156

3.魂のこもった店舗作り 表面的な物やサービスを売るのではなく、それの持つ付加価値を最大限に引き出 し、真心を沿えて売る、つまり、魂を入れることを考えてみたいと思います。1つ の小売店舗を例にして考えてみましょう。 ☞何を売るのか 「〇〇の販売を通じて、生活の向上に努力する」つまり、「〇〇を売ることが目 的ではなく、どれだけの幸せ感をお客様に提供していくことができるか」とい う、発想が営業の基本になっているかどうか、ということになります。 商品の形だけでなくその商品の持つメッセージを届けていることになります。 ☞どのような店舗にするのか 御用聞きという昔からの言葉があります。御用聞きとは、読んで字のごとく「御 用を聞きにいく」ということです。「物を売り込みにいくことではなく、課題を頂 きに行ったり、聞き回ることだ」という考えになります。 そして、「御用聞きによって得られた情報を基に、ワクワクするような感動、 興奮の場を提供する工夫を探し続ける」ということになり、店舗はその研究の成果 を発表する場所という位置付けになります。 ☞売り方はどうするのか 「当社の商品は売るのではない。商品を通してお客様のためになるのだ」という 発想になります。つまり、「当社の〇〇によって、いかにハッピーになっていた だくか」ということを基本とした売り方を考えていくことです。 具体的には、店舗デザインやブランディング、そしてインターネットなど、様々 な方法を研究、実行していくことになりますが、その基本は見えない心をいかに届 けるか?という心と思います。 仕事とは 仕える事と 読むなれば 心構えも 新なるなり いかがでしょうか。営業に対する見方が変わり、魂が入ると上記のように視点が 変わり、結果的にお客様に支持されるようになってゆきます。つまり、「売るので はなく自ずと売れる」形に変わっていくということです。 営業のテクニックなども必要ですが、その根本にある魂がなければ活かすこと は出来ません。 ☞社員全員で話し合い、様々な形を考え挑戦してゆきましょう。 157

4.お客様開拓 3つの方法 「顧客は自然に減少していくため、それを補うためには新規開拓が必要である」 と言われます。しかし、一方では顧客を大切にしているだけで、自然に増加してい る会社もあります。3 つの開拓方法〈新規、深耕、感動〉を考えてみましょう。 ☞新規開拓 新しいお客様を開拓していく方法で、戸別訪問やチラシ戦略、価格戦略など、 様々な方法があります。最も一般的な開拓方法ですが、費用の割合が大きいこと と、一過性になりやすいという欠点があります。新規出店や事業開始の時など永続 的な将来展望に立ち、思い切った手段を講じるなど、一時的なものは有効ですが、 新規開拓のみに頼る営業は長続きしないように思います。 新規開拓の特性を考え効果的に活用しましょう。 ☞深耕開拓 既存のお客様を深く耕すようにビフォアーアフターサービスなどの顧客管理を徹 底して満足与えることにより、お客様からの発注割合を100%の顧客にしていく開 拓方法です。 特に意識しなくても、顧客満足度が上がるにつれ、成果が上がっていくもので す。 いかにしてお客様に満足して頂くかを社員一丸となって進む会社に見られる開 拓方法です。 ☞感動開拓 いかにしてお客様に満足を与えるか?と考えるお客様満足からさらに踏み込み、 感動を与え、感動の輪が「情報」としてお客様からお客様へと自然に広がっていく 開拓方法です。 感動は、「感じて動く」と書くように、お客様がリピーターとなり、紹介によ り売上の基礎が作られていきます。 「満足から感動へ」と言われるように、お客様そのものを大切な財産にする考え はこれからの開拓方法の主流になっていくものと思います。 このレベルに達するには、表面的な営業方法では難しく、お客様の立場に立ち、 「お客様よりも真剣に自社を見つめる目」が必要です。 「真剣さにおいてお客様に負けるな!」ということです。 開拓は 新規深耕 感動ぞ それぞれの良さ 活かし用いよ ☞それぞれの良さを用いて効果的な開拓を考えてゆきましょう。 158

5.インターネットによる営業 インターネットの普及は、スマートフォンを含め全世界で 40 億人を越えると言わ れており、今までの営業スタイルが大きく変わりました。インターネットを利用し たオンリー1 営業を研究しましょう。 ☞購入を判断する媒体とスピードの変化 過去は圧倒的にテレビ CM、新聞広告などが多かったのが、今やインターネットが トップになりました。 そして購入の判断時間が、大幅にスピードアップしました。今までは店頭で見た り、カタログを取り寄せて判断していたものが、インターネットにより、商品購入 前に検討は終わっており、営業当事者と会う前に購入を決定している割合は 60%に も達しているとの調査結果が出ています。 ☞“売り込みから見つけてもらう”への変化 従って、いかにインターネット上から見つけてもらうための努力を重ねてゆくか が、営業戦略、戦術面の重要なテーマになってきました。 方法については、ブランディングやインバウンドマーケティングなど、日々研究 されており、その流れに遅れないようにすることも必要となってきました。 ☞インターネットが持つ独自のメリット ・地域に囚われず広範囲に発信することが可能 ・請求する相手を多岐に設定できる ・顧客全員に合わせた最適な情報を提供できる ・ウェブ上で、顧客と密接な繋がりを構築できる インターネットの情報による販売形態は、物理的な条件を撤廃しました。 今までは、店舗面積や資金力に制限があったため、売れ筋商品を選び販売してき ました。20:80 の法則に基づく販売方法を徹底したのがコンビニエンスストアなど です。 しかし、EC(electronic commerce) 販売の普及により、物理的な制限がなくなり、 全ての商品を扱うことが可能になってきました。たまにしか売れない商品を網羅し、 消費者の選択肢を増やすことにより満足を受け急速に伸びてきたのが、Amazon な どの EC 販売会社です。その他に様々な形態が考え出されており、整理出来ないほ ど変化しております。 ☞これらインターネットの特長を良く理解し、自社の営業に取り入れてゆきましょ う。 159

6.取引形態の特質を考えた営業 取引を顧客の観点から区分けした、BtoB や BtoC という言葉を聞くことが多くな りました。この取引形態の区分と特徴、基本的な違いを考え、それぞれに適した営 業を考えましょう。 1. BtoB (Business to Business) 企業間取引 部品メーカーが、完成品を製造するメーカーに販売する業種や、卸売り業者が小 売業者に販売する取引の形です。 ・お客様が必要とする機能を満たしているか?どの位の利益を生み出せるか?など、 投資対効果が重視される ・多くの競合会社から見つけてもらうために、インバウンドマーケティングなどが 重視される ・取引までの開始は、時間がかかるが、一旦取引が開始されると安定する 2. BtoC (Business to Consumer) 企業対消費者 小売業が商品を直接販売する形です。 ・購入時、合理的な判断よりも、趣味的、感覚的、人的判断によることが多い ・購入の意思決定が早い。ブランディングなどが重視される ・相手の購入金額は少ないが、利益率は高い 3. CtoC (Consumer to Consumer) 消費者対消費者 消費者同士の取引形態で、これを仲介する不動産業者や旅行会社などです。最近 では、インターネットを通してのフリーマーケットやメルマガなどもこれに当たり ます。 4. BtoE (Business to Employee) 企業対従業員 会社が従業員に対し、生活用品や食事などを提供する形で、福利厚生の一環とし て考えられており、特に大企業の社員食堂などへ普及しています。 5. BtoG (Business to Government) 企業対行政 行政対会社の取引で公共事業などがあり、土木、建築業などが中心です。更に直 接の仕事でなくても助成金など様々なサービスがあり、検討する必要があるものと 思います。 この 5 形態の違いを良く理解し、最も効果的な方法を考えてゆきましょう。 ❖次頁に営業収支計画を損益分岐点から考えてみましょう。 160

7.損益分岐点を探る 営業活性化計画は、営業を活発に行い売り上げを上げると同時に会社を維持発展 するために、売上利益を求められます。 いかにして、無理なく、自然な形で毎月の収支を保つことが出来るか?を損益分 岐点図表で探ってみましょう。 損益計算書 項目 式 対応方法 ① 売上 (1)損益分岐点分析による目標設定 ② 売上原価 (2)減価計算により、売上原価率を下げる ③ 売上利益 ①-② (3)実行予算書重視により売上利益率を守る ④ 販売管理費 変動費 ムラムダムリにより削減する 販売管理費 固定費 〃 ⑤ 営業利益 ➂-④ (4)営業利益の確保 ⑥ 支払金利 ダム経営を考える(潤沢な資金確保) ⑦ 経常利益 ⑤-⑥ これが黒字でなければならない(創税の考え方) ※グリーンが変動費、ブルーが固定費、イエローが利益です。次頁、グラフ。 (1)損益分岐点分析による売上目標設定 月間売上目標をいくらに設定すべきか?を損益分岐点分析により分析しましょう。 損益分岐点とは、損(赤字)と益(黒字)の境目を求める手法のことで、目標利 益を達成するために必要な売上高を求めることが出来ます。また、製品別などの採 算性を比較することが出来ます。 計算式は次の通りです。 固定費 損益分岐点売上高= 1−変動費 売上高 損益分岐点図表は計算式により、売上高を決定することが出来ますが、計算する よりも図表にして、いかにして利益を出すか?いかにして利益率を上げるか?をグ ラフを見ながら考えるために活用しましょう。 グラフにすると固定費と変動費、そして売上利益率により利益が左右されること がわかるようになります。 ❖次頁で詳しく説明しますので、利益捻出の仕組みを理解しましょう。 161

1. 損益分岐点分析の構成 損益分岐点分析では、項目(売上原価、一般管理費、営業外費用)を、固定費と変 動費に分けて収益構成を分析します。 2. 対角線に赤線を引き、その交点が損益分岐点を示す 損益分岐点が左に寄れば寄るほど、少ない売上高で利益を捻出出来ることが分か ります。 そのためには、固定費を極力変動費化させ ることが、効率的であることが理解出来ると 思います。 3. 損益分析点分析の活用方法 利益を確保するためには、いくらの売上高 が目安となるか? 損益分岐点が売上高の最低目標となりま す。 (1)いかにして売上原価率を下げていくか? (2)いかにして、変動費の割合を増やしていくか? このように損益分岐点分析により、売上原価率を下げたり、一般管理費などを削 減することで、売上目標の下げ方の目安となります。 つまり、売上を伸ばすことよりも内部の体質を変動費型構造に切り替えてゆくこ とが重要であることを理解できるものと思います。 「売上を下げながら利益を上げる」考え方の出発点になります。 ☞自ずと売れる仕組み作りの基本的な数字の把握はこの損益分岐点図表で考えまし ょう。 162

(2)減価計算により売上原価率を下げる 売上利益を上げるために売上原価率を下げる最も安易な方法は仕入れ原価を値切 ることです。しかし、値切ることは、信頼関係が失われ、お互いの永続的な発展は 出来なくなります。営業システムの改革と仕入れ業者との話し合いにより下げてい かなければなりません。 その売上原価を下げる方法を考えてみましょう。 ・・・・ 〈原価計算は減価計算による〉 原価計算の基礎になるものは、売上原価率です。 あらかじめ、売上原価率を定め、その原価率に到達するまで、減価を考えるとい う習慣が大切です。 原価計算は 3 つの方法があります。それぞれを比較してみましょう。 ☞結果計算 売ってから集計してみないとわからないというものです。まさに、論外と云うべ きものですが、苦境に陥っている会社のほとんどがこの結果計算です。 ☞原始計算(利益積上式) 仕入れ金額に利益を乗せて販売する方法です。これでは、仕入業者に価格決定を 依存する形の為、価格は高いものとなり、価格競争力は弱くなります。原価が初め にある形で原始計算という方法です。 〈計算例〉仕入れが 100 万円:30%の売上利益率で販売したい。 〇売価 100 万円÷(1-0.3)=143 万円 ☞減価計算(販売価格前提式) まず、販売価格を決定し、その販売価格より利益率を計算、原価を割り出し、そ の原価内で納めるよう工夫しながら原価を下げていく方法です。お客様に受け入れ られ、会社の利益も確保され、仕入れ業者も納得する方法です。 〈計算例〉143 万円の見積りに対し 120 万円で売買契約が成立したが、30%の売上 利益率は守りたい。 (1)売価 120 万円 (2)原価 120 万円×(1-0.3)=84 万円 (3)減価交渉 仕入価格 100 万円を 84 万円に減額する交渉、相談をして売上利益 率 30%を確保する。(当初の原価は 143 万円×0.7=100 万円であった。) この 3 つの計算方法の違いを良く理解し、③の減価計算を実行する習慣が出来れ ば確実に売上利益は上がっていきます。 この減価計算の基礎になるものが、実行予算書です。 163

(3)実行予算書が売上利益率を守る どんな業態であるにせよ、前もって予算を組むことが重要です。利益の落ちている 会社のほとんどは、実行予算へのこだわりがありません。売上利益の確保のため、 仕事を着手する前に予算を組み、利益率を確認してから実行する習慣をつけましょ う。 売上利益が確保できれば、その売上利益内で一般管理費を納めることを考えます。 その差額が営業利益であり、この利益がプラスにならないと、経営続行は不可能と なります。 ☞実行予算書の内容 ・売上高、売上原価、売上利益、利益率の事前確認 ・売上原価(仕入れ、外注費、経費)の明細と支払い計画 ・実行予算金額と結果の比較など(PDS サイクルの実践) ☞実行予算書作成の目的 ・事前に目標の売上利益率を把握するため ・担当者の管理能力を向上させるため ・予算と結果を比較することにより反省、次回の仕事に繋げるため 実行予算書は全業種に当てはまるものです。必ず実行前に結果を決定する習慣が 必要です。 ☞実行予算書の作成 ・売上高、売上原価、売上利益、利 益率を予算欄に記入。終了後、結果 欄に結果を記入、比較します。 ・売上原価の内容を一覧表にしま す。 その他、必要なものの注意点など を盛り込みます。 ※実行予算書は主に建築業などで 重視されますが、全業種とも大切 なものです。 各業種で工夫を凝らして作成しま しょう。 164

Point 売上利益率のこだわりは三方よしの原点 売上利益率は高ければ高い程良いというものではありません。 三方良し、つまり「売手よし、買手よし、世間よし」に繋がらないからです。 売上利益率は、売上利益÷売上高、売価は原価÷(100-売上利益率)で求めま すが、利益率は業種によって様々です。 問屋さんのような商社は少なく、旅館業や飲食業などのサービス業は大きく なります。業界での指標があると思いますのでそれを参考に自社の状況を加味 して目標の売上利益率を決定して下さい。そして仕事に取りかかる前に実行予 算書を作成してから、実行することにより、確実に目標利益を確保することが 出来ます。 売上利益率は自社の利益とお客様の負担割合の調和でもあります。 売上利益率とお客様の負担率の関係を考えてみましょう。 原価 売上利益率 売価 会社の利益 お客様負担率 10% 111 円 11 円 111% 100 円と 20% 125 円 25 円 125% した場合 30% 142 円 42 円 142% 40% 166 円 66 円 166% 50% 200 円 100 円 200% この表でわかるように売上利益率が上がるとお客様の負担率が急激に大きく なり、永いお付き合いが出来なくなります。 「売手よし、買手よし、世間よし」の調和を大切にしてあらかじめ決定した売上 利益率を守ることが大切であることが理解出来ると思います。 売上利益率の重視により、改善することが出来れば、営業テクニックなどは、そ れ程考えなくても自ずと利益は上がることに気付くことと思います。 売上げは 減らすからこそ 増えるもの その真理をば 悟ることなり 「売上を減らしながら利益を上げる」真理を理解して下さい。 Column 実行予算書は売上利益率を向上させる 利益率の低下に悩む会社はほぼ間違いなく実行予算を作る習慣がありません。 いくら利益が上がったか、結果がわからない経営者があまりにも多いのが現実で す。実行予算書を作るだけで売上利益率は少なくとも 5%程度は上がるもので す。 ❖以上、営業活性化計画への考え方と、売上目標の考え方に絞り説明しました。セ ールス方法については様々な本で紹介されていますので、取り上げることは控え、 私の体験談を通して営業を考えます。 165

営業活性化 10 訓 1.売上は伸ばすものではなく、伸びるものである 売れる売れないはお客様が決めるものだからである。従ってお客様との心の交 流を深めることを考えなくてはならない。 2.売上利益は金額ではなく、利益率を重視すること 「売ってよし、買ってよし」は、お互いの利益の調和により、成り立たせるもの だからである。 3.魂のこもったビフォアー、アフターサービスを徹底すること 販売は、過去、現在そして未来へと続くものであり、決してその場限りのもの ではないからである。 4.オンリーワン 商品を持たなければならない オンリーワンは経営理念を追求する結果として生まれるものであり、価格競争 を避けるものだからである。 5.営業とは、自ずと売れる仕組みを作ることである ヒト(組織)、モノ(商品、サービス)、カネ(財務)の調和により成り立つものだ からである。 6.形と心を同時に考えなければならない 物は全て見えるもの(形)と見えないもの(心)の 2 面が調和を取って成り立つも のだからである。 7.深耕開拓と感動開拓を重視すること 営業はお客様との心の触れ合いにより、自ずと広がるものだからである。 8.情報を大切にすること お客様からの「情けに報いる心」により自ずと伝わるからである。 9.アクセルとブレーキの調和を忘れないこと 営業は、売れる時は自然に売れていくために、常にひずみが発生するものだか らである。 10.多柱化を考えなければならない 一つの屋根を多くの柱で支えることにより、強くなるからである。 166

私(著者)の営業体験と Point 営業とは、「自ずと売れる仕組みを考えること」であり、様々な営業戦略論や営 業テクニックを駆使することはそれ程必要としないものです。 そこで、私の今までの営業体験を生の事例として参考にしながら、営業の本質に 迫ってみたいと思います。 私は社会人になってから 50 年以上になります。この間、様々な営業を体験してき ました。6 年弱のサラリーマン時代の燃料販売、起業模索中の様々な商品販売、独立 起業してから 26 年間の建設関連営業、倒産後 20 年間の再建コンサルタントとして のあらゆる業種の営業支援などです。 その営業体験としての結論はどのような営業であるにせよ、“理念の本質化によ るオンリー1”を目指すことに尽きると思います。そのことが営業活性化計画の源点 になるものと思います。 営業活性化具体例 1.燃料の配送業務体験(18 歳) 100%配送体制の構築 2.飛び込み、セールス体験(20 歳) ランチェスター戦略 第一法則 3.全国の路線運送会社への燃料販売(20 歳) 新規重点営業 4.本支店間総合チームによる営業(21 歳) プロジェクトチーム計画 5.歩行者天国でのおもちゃ販売(22 歳) 群集心理の活用 6.美装工事での起業(25 歳) 実証提案営業方法 7.自然と拡大発展する営業(26 歳〜) 多柱化方針 8.武器を持った営業(30 歳〜) 弱者のランチェスター戦略 武器 1.風水家相学による設計 武器 2.事業計画立案による提案営業 オンリーワン戦略 武器 3.負債肩代わり営業 9. 静岡市内—公園トイレの清掃 社会貢献事業 10. 総合建設業確立途中の倒産 根っこの未熟さ露呈 11. 自ずと広がる再建コンサルタント体験 以上はそれぞれ、私なりに一所懸命考えて実行してきたものであり、自信を 持って勧めることが出来ます。業種は違ってもそれぞれ自社に置き換えて読み 進めて下さい。必ず参考になる部分があるように思います。 ❖次頁からそれぞれ詳述します。 167

1.燃料などの配送業務体験~100%配送体制 昭和 42 年、鈴与へ入社、名古屋支店での最初の仕事は石油関係の配送手配だった。 ガソリン・重油・オイル・石炭・LPG などの受注と配送までを一手に引き受ける窓 口の仕事だ。 机上に、電話が五台も並んでいるほど忙しく深夜残業の毎日だったが、二ヶ月位 でマスターして手配の仕事なら負けないと自負するようになった。学生時代には、 縁の無かったペンだこができたほど忙しかった。 〈不測の事態に柔軟に対応する体制作り〉 どんなに忙しくても、ガソリンスタンドなどの在庫が切れてしまうことが無いよ う、全顧客の注文サイクルを知り、注文漏れをなくすよう配慮した。 夕方 5 時頃かかってくる明朝一番指定の電話注文に対しても、応えられるよう 様々な方法により万全な配送体制を敷いた。いかに無茶な配送指示にも動く「闇の 運送会社」を組織することまでした。また、仕入れ体制もいくつかのパターンを作 り、不測の事態にも対応した。 当時行った配送体制は ・ タンクローリー会社(正規運輸会社と闇運輸)と自社ローリー車による、ガソリ ン、軽油、重油などの配送 ・トラック会社と自社トラックによる、ドラム・オイル・LPG の配送 ・タンカーでの四日市コンビナートからの輸送 これらの配送手段を駆使して完全な配送体制を作った。 昭和 42 年当時、スエズ動乱によりスエズ運河が不通となったため、タンカーがア フリカ希望峰回りとなり、入荷量が極端に減少した時、石油の確保に大変苦労した ことが良い教訓になった。 Point 100%配送体制と深耕開拓 100%受注体制を可能にするために、取引先の発注パターンを研究、発注を受 ける前のビフォアーサービスと、配送後のアフターサービスを徹底的に考えま した。そして配送体制は、いついかなる時にもムリな注文に応えられるよう、常 に余力を残した計画を立てていました。この体験が後々「どんな仕事も断らな い」方針を支えてくれることになりました。 このやり方は、顧客からの大きな信頼を得ることとなり、深耕開拓に繋がりま した。 従来のお客様が安値の会社に移っても、いつかはトラブルが起きます。その時 に戻ってきてくれたことは大変うれしい思い出です。 168

2.飛び込みセールス体験 名古屋支店から 2 年後の昭和 44 年 6 月、いきなり四日市出張所へ転勤となった。 倒産した石油会社を鈴与が吸収したため、ガソリンの新規開拓の仕事を任された。 名古屋支店では、商社相手に 1 つの電話で数百万円単位の取引をしていたものが 1 リットル 50 円のガソリンセールスになった。しかし、これはこれで勉強になった。 誰も教えてくれる訳でもなく、全くの飛び込みセールスだったが、それなりの成果 を挙げ、まもなく三重県下でもトップクラスの売上となった。この時、営業のやり 方を「セールスマンタブー集 10 ヵ条」と名付けたセールスマニュアルを作り会社に 提出した。 〈セールスマン・タブー集(抜粋)〉 1.第一回目の訪問の時、この見込み客は絶対に取るということは考えるな! 初回は調査の段階であると思った方が良い。『どこで給油しているか?』『満足 度は?』などを聞き出し、次回からの作戦を立てるについての資料とするよう考 えるべきである。 取ろう、取ろうと思うと、そこの敷居が高く見えてくる。また、簡単に追い返 された時のショックも大きく、スランプの原因にもなりかねない。だから、『追い 返されて普通、こちらの話を聞いてくれたら儲けもの』と考えて、気負わずリラ ックスして飛び込みセールスをやろう。 このような内容で10カ条にまとめた。はるか50年前の20歳当時の若きセールスマ ンの体験記である。下記図は、私が四日市出張所にいた頃の販売数量の推移であ る。目覚ましい勢いで販売量が伸びたが、四日市(現名四国道)バイパス開通と同時 に大幅ダウンしたために全国展開を考えることになった。 169

3.全国の路線運送会社への新規重点営業 最初は、四日市市内を中心とした開拓だったが、昭和 45 年に四日市バイパス開通 後トラックが走らなくなったため、岩崎所長の指導の基、全国の路線トラック運送 会社へ運行途中給油の軽油販売に専念。全国の運送会社にアタックした。 徹夜で国道一号線の通過車両を調査、その資料を基に新規開拓に行くのである。 当時の営業はすさまじく、朝早く起き一番の東京への新幹線に乗り、朝食は駅で パンと牛乳のみ、昼食は抜き、夕食は仕事が終わってから食べた。昼食を食べると 血液が胃に回ってしまうのでセールスの迫力が落ちるという理由からだった。タク シーも一切使用せず駅からひたすら歩いた。一回の出張で 2~3 キロは痩せた。 当時のライバルは一光石油と宇佐美鉱油で、大手の新規開拓では必ずぶつかった。 最初は弱気だったが、徐々に必ず勝つという気持ちに変わっていった。 この時も路線トラック向けの軽油販売で、鈴与は日本一になろうと誓っていた。 四日市では、とにかく良く動いた。毎週 2~3 日は新幹線で東京方面へ行き、その 間に自動車で大阪方面など全国へ 1 日 500 キロも走るほどで、1 年間の走行距離も 50,000 キロに達していた。それにつれて売上もぐんぐん伸びていった。 手作りパンフレット 1 枚で、全国へ営業をしていた当時のパンフレットと著者自 身 Column オンリーワン ナンバーワン へのこだわり Po当in時t 、身を削オるンよリうーにワ全ン国へナ飛ンびバ廻ーっワてンいまへしのたこがだ、わそりれを支えていたのはオ ンリーワン、ナンバーワンへのこだわりであったように思います。 全国にない独自のサービスを創ろう!業界ナンバーワンになろう!の思いは ずっと受け継いでいます。 現在のオンリーワンの目標は「真理による経営学の確立」です。 170

4.本支店間統合プロジェクトチームによる営業 四日市から全国へのセールス展開となり、四日市出張所は共同石油グループ内の 軽油販売高で三重県下一番になった。全国にある鈴与チェーン約 500 店舗の中でも 目立つ存在になっていった。 Point 提案型 新規開拓営業 この全国への新規開拓は、鈴与の持つ全国組織チェーンの経営資源があればこ そ出来た営業で、徹底して相手運送会社の路線運行コースや会社の内容を調査 し、相手の立場からの提案型営業を心掛けました。 そのため、乗務員が利用するドライブインの調査など、車の流れを把握したり、 請求明細書もトラック1台毎に作成。車両管理にも使えるなど提案をしました。 全ての営業に共通することは「一味添える」ことが大切と思います。 そして翌年(昭和 45 年)、河合常務の指令で東京支店に転勤、中央に活躍の場を 与えて頂き、思う存分仕事をすることができた。 全国の本支店を統合した路線トラックグループというプロジェクトチームを組織、 毎月清水の本社に、全国から担当者が集まり頑張った。 当時、仙台から岡山までの各営業所の担当者には大変お世話になった。この鈴与 の本支店間でのチームプレーの連携事業は、それまでの各支店間の壁を破るのに、 大きなキッカケになると言われ注目を浴びた。 最初の頃はトラック専門の大型給油所は少なかったが、1,000~1,500 坪の大型ス タンドを次から次へと出店した。 私が在籍していた時だけでも亀山、知立、厚木、仙台、岡山とオープンした。 Point チーム運営の条件 このチーム運営の仕事は、全国組織の大企業であればこそ可能になるもので あり、良い経験をさせていただきました。しかし、1つの確立した経営方針の元 に、協力会社を募り運営することができれば、中小企業であっても考えられる1 つの経営方針になり得るものです。 共通の理念、方針、目的、目標、そして具体的な実行方法が全て整っている事 が、チーム運営の条件になります。 ◆鈴与を退社 その後、チームは独立、「鈴与トラックステーション株式会社」に成長したが、私 は、その独立する姿を見ずに鈴与を辞めた。 私のやりたい放題を黙認してくれた東京支店長や、諸先輩、同僚の皆様を裏切り、 大変申し訳ないことをした。5 年 7 ヶ月と短かったが、本当に実り多いサラリーマ ン生活だったと感謝している。 171

5.歩行者天国でのおもちゃ販売 23 歳で鈴与を退職後、独立起業するための仕事を模索していた。 夏は学生アルバイトを雇い、東京のデパートの暖簾(のれん)を借りて 1 個 100 円の「びっくりパチ」というおもちゃを販売した。これはよく売れて、新宿小田急 デパートでは昭和 48 年度売上数量でおもちゃ部門トップになった。銀座と上野の松 坂屋前の歩行者天国でもよく売れた。 当時、銀座で売り出されたばかりのマクドナルド1個 40 円のハンバーガーをほお ばりながら頑張った。 Point 路上パフォーマンス販売 この仕事は、群衆心理に基づき販売するもので、若い時でなければできない貴 重な体験でした。 1組 3 人で 2 人が遊び、1 人が商品を渡し代金を受取る形で、デパート前で毎 週日曜日毎、2~3 ヶ所で行いました。若い年代の遊び感覚でなければできない 仕事でした。 利益は、ほぼ同じ年代の大学生アルバイトとビアガーデンなどで飲み、ほとん ど残りませんでしたが、楽しい思い出となりました。 現在では、受け入れられない営業方法とは思いますが、これを見ていたある会 社が販促品として一括購入をしてくれたことからも営業戦略として考える余地 があるのかもしれません。 Column 独立へのこだわり この他には、ある社長の自宅に住み込みで秘書修行や様々な仕事を体験しまし た。 鈴与当時は接待で一食1万円の夕食を食べていたのが、辞めてからは一日 100 円の生活になりました。3 袋 100 円の即席ラーメンを食べ、腐りかかった一皿 100 円のバナナを栄養にし、たまに 150 円のスタンドのカレーを食べるのがごちそう でした。風呂で栄養不足で倒れそうになったのも良い思い出です。自分勝手に辞 めた鈴与に対する申し訳なさと二度とサラリーマンには戻らない決意からでし た。 そして夜には夜間大学へ通い、経営学を学びました。大学内の企業診断研究会 の江口さん、竹内さんを始め、会の皆さんからは大きな刺激を受けました。中小 企業診断士を目指して勉強をしたことが、現在の経営コンサルタントの基礎知識 として役立っています。この基礎知識に加え、26 年間の経営体験と倒産体験、そ して 20 年間の再建コンサルタント体験を重ね今日に至っています。 172

6.美装工事での起業~実証提案営業 様々な営業体験から身体を使う仕事に的を絞り、何を以って起業するかを考えて いる内にハウスクリーニングに興味を持ち、3 ヶ月の修行で概略を覚えた。そして 昭和 49 年 4 月、24 歳で静岡に戻り「有限会社静岡美装」として創業した。 オイルショック直後、その年は不景気の年と言われたが、3 名の社員と祖母の計 5人でスタートした。 最初、大手ハウスメーカーを中心に営業をした。当時の住宅引渡しは、数人のア ルバイトによる簡単なお掃除で済ませていたので、ペンキやモルタルも付着したま ま引き渡される事が多かった。それを徹底的に美しく磨き上げ、傷があれば直し、 柱の日焼けや天井の手垢なども取るのである。それを一人一日でこなしてしまった。 当時では、考えられないスピードで注目を浴びた。 Point 実証提案営業 この仕事は全く新しい仕事だったので、無料で施工させていただきました。 先ずは、顧客に仕事の内容を知ってもらうため、1棟分を無料で作業し、確認 と納得をいただいてから取引をお願いする形を取りました。 この提案型営業方法により、紹介が紹介を呼び経営は安定していきました。こ の体験から「お客様は 5 人いれば良い」が生まれました。 大手住宅メーカーに片っ端から営業をかけ、他に競争相手もいないことから、経 営は安定、美装工事のパイオニアとして県下トップに立った。 Column 長期入院により営業への考え方が変わる 当時は、利益とか会社の将来とか考える余裕も無く、明日の仕事を確保するた め、ひたすら売り込みに歩き、社員の仕事を確保するまで会社に帰れない日々が 続いていました。 その結果、2~3 ヵ月すると頭がガンガン痛くなり、体温も 40 度を超える程の 高熱になり、我慢しきれず、静岡国立病院へ行くと腎盂(じんう)膀胱炎と診断 され即入院、退院まで 3 ヶ月もかかりました。 この過労による入院により、営業のあり方を考え直すことになりました。 営業と言うものに情熱を燃やしてきましたが、病気になり徐々に営業程過酷な 仕事は無いと思うようになりました。そして社員に営業はさせたくないと思うよ うになり、営業をしなくても困らない会社を作ろうと考えるようになっていきま した。 この体験から、「営業とは、自然に湧き出る泉の如く自ずと売れる仕組みを考 える事である」が生まれました。 173

7.自然と拡大発展する営業~多柱化方針 退院してからは、無理をしないでも仕事が入ってくる形を求め続け、1 つ1つの 仕事を大切にした。その結果、営業をしなくても次から次へと受注が増えてくるに 従い、当時増改築と言われていたリフォーム工事分野にも進出した。 仕事の拡大に合わせ、美装事業部からリフォーム事業部を独立させた。そしてリ フォーム工事で間に合わなくなると、やがて新築工事となる。住宅も市街地となる と、ビルにして最上階に住み下層階を賃貸にするなど、マンションやビルの仕事が 増えてくる。 さらに、土地や住まいの売買も依頼され、自然と土地分譲やマンション分譲など に広がっていった。こうして、静岡美装1社から多柱化が進むにつれ、豊建設、 ユーイック(不動産)と新しく会社を設立、総合建設業を目指した。 社員を始め、外注業者など、全員がよく仕事をしてくれ、実に安定した経営を続 けることができた。 〈多柱化による総合建設業の確立〉 総合建設業としてオンリーワン、地域ナンバーワンを目指していた当時の組織図 174

8.武器をもった営業~弱者のランチェスター戦略 「静岡美装」から「豊建設」、不動産の「ユーイック」と3社での総合建設業の確 立へと事業が拡大、成長するにつれ、競合相手は地元の大手ゼネコンや全国レベル のハウスメーカーとなり、圧倒的な格差があった。 そこで、それを補うための武器を 3 つ持ち、なんとか競争に打ち勝とうとした。 ランチェスター第一法則 局地戦 戦闘力=武器効率×兵力数の実践である。 〈武器 1:風水家相学による設計〉 リフォームを依頼されているうちに家相、つまり、家の間取りにより、家族の運命 が左右されることに気が付いてきた。 特に競売物件のような住宅を、買った人からリフォームを依頼されるうちに、間 取りと住む人の運命に因果関係があることに気付いたのだった。 リフォーム工事を請負いながら研究するうち、家相は迷信ではなく、科学的なも のであることを確信するようになっていった。 つまり、家相学は気象衛生学、天体物理学、心理学と言うべきものであり、決し て無視することのできないものであった。設計図をみれば、その家族の状況がわか るほど確かなものである。 建築に携わった 25 年間、たくさんのリフォームや建築住宅、店舗、事務所などを 請け負ったが、すべて家相学・風水・年廻り・方位などを取り入れて設計した。当 時 5~6 人在社していた建築士に「住まいづくりのプロである以上、素人であるお客 様の言う通りに設計してはいけない」と言っていたほどである。 Column 武器としての家相学 大手メーカーが最も不得意なものは、住宅の設計能力が無いことです。多くの 住宅営業マンは、営業のプロであっても住宅設計のプロでは無いからです。そこ で、大手メーカーに勝つために、“幸福を育くむ住まい” として理想の住まい を家相学に求め対抗しました。 ①自然環境と、いかに適応することができるか? ②太陽エネルギーを春夏秋冬に合わせ、いかに効率よく取り入れられるか? ③住まいを単なる家から幸福を生む住まいへと昇華させられるか? このようなテーマを掲げ、家を造ろうとするお客様に対し“風水家相講座を開 き、自分自身で納得のゆく間取りを考えていただくようにしました。この風水家 相講座はずっと続いており、現在でも陰陽五行風水家相塾として毎月定期的に 開催しています。 175

〈武器 2:事業計画立案による提案営業〉 数千万円から 1 億円単位の建築工事となると、小さい会社での受注は難しくなる。 大手との競争となるからだ。そこで提案営業よりも一歩も二歩も進んだ事業計画立 案による営業を武器とした。 ① 店舗飲食店など ・店舗のロゴ、デザイン :デザイナーを置き C 1 計画(ブランディング)を実行 した ・収支計画と借入申請 :事業計画作成と共に資金調達を代行した。 ・経営指導、開店広告 :開店してから軌道に乗るまで応援をした。 ② ホテル(ファッションホテル) ・ホテルの収支計画及び、資金調達:資金作りから建築まで全て引き受けた。 ・開店指導、税務相談、M&A :オープン時から軌道に載せるまでカバー、 お客様間のM&A(吸収合併)も行った ③ マンション、アパート ・収支計画、資金調達 : 設計と同時に収支計画と利廻りを考え調達もした。 ・入居者募集及び保証 : 不動産業者と提携、家賃保証をした。 ・税金対策(相続対策など) :避けて通れない税務対策を一緒に考えた。 このように、建設工事のみでなく建設に関するソフト面までカバーした。つまり、 “こうすればこうなる” との事業計画書を作り、将来の見通しをつけ安心していた だいた上での受注を心掛けた。 建築するだけでなく、投資額・調達方法・返済方法まで、キチンとした計画書を 作成、その計画書の実行結果までを保証する。さらに、借入金の連帯保証人まで引 き受けていた。 Point 事業計画書の考え方 大型物件の建築を受注するには、先ずは事業計画書ありきでした。 銀行から資金調達をする際、借入内容や返済方法までを明記する必要があっ たからです。当時の営業は、事業計画書作成から始まり、その計画書の正確性に より、受注に結びつけていました。この計画書の作成は大手業者でも難しかった ようです。 現在、再建コンサルタントの主な仕事として経営計画書を作っていますが、こ の頃の経験が役立っています。「この事業は必ず成功する」と言ったならば、ほ ぼ融資は受けられません。慎重性に欠けると判断されるからです。「計画書通り に運ばない場合は、このように手を打つ」としなければ、銀行は相手にしないこ とをこの頃学びました。 176

〈武器 3:債務肩代わり営業〉 バブル景気は平成 2 年頃はじけ、売上も急速に落ち込み半減したが、保有してい た土地を売却、なんとかバブルショックを乗り切り、一から出直した。 それまで土地購入やマンション、ホテルなどへ融資が簡単に行われていたものが、 総量規制等により制約されるようになったので、本来の住宅建築や事務所など堅実 な建築工事に方針を転換したのである。 そして、平成 5~6 年頃になるとバブルの後遺症を脱し、再び業容を確立した。 この頃から金融機関に信用され、認められ、不良債権の処理を依頼されるように なった。 銀行の融資先が倒産する時、担保に取った土地建物を融資金額と同額で買うので ある。これにより銀行は不良債権が豊建設(当社)への優良債権に代わり、且つ、 建築工事の融資が増えるのである。 銀行としても万々歳であり、当社としても建築工事を受注することになり、お互 いにメリットがあった。 最初に、静岡市駅南銀座のユーフォリア南町マンション分譲事業を手掛けた。(右 下写真) これは、従来の常識を覆した画期的な販売方法により成功した。四方独立 壁の戸建て自由設計マンションとして、スケルトン(躯体のみ)にて分譲販売とし、 内装を受注工事とする売り方だった。受注工事にすることで、資金不足を補ったの である。しかも、一棟当たり 20 坪弱で住宅金融公庫は適用されず、駐車場も無い条 件で 4,000 万円もするものだったが、大方の「売れないだろう」という予想を裏切 り完売することができた。 これにより、分譲マンション業界の成 功例として認められ、銀行から次から次 へと様々な物件が持ち込まれるように なった。 それらの物件を処理するためには、そ れまでに培った建築に関連した知識、以 前から学んでいる経営学や企業診断の 知識、さらに風水、家相、事業相、地相 学、デザインなどを総動員した。 ※右は平成 8 年当時の新聞広告 177

9.社会貢献事業 経営目的の 1 つとして、地域発展に貢献することが挙げられる。 43 歳(平成 4 年)頃、子供達を連れ、駿府公園に完成したばかりの巽櫓門(たつみ やぐら)を見に行った。駿府城の正門を忠実に再現した立派な門である。 そして、門をくぐった所にある公衆トイレに入ろうとしてびっくりした。あまり の異臭と汚れで入れない程だった。 市民の文化水準を計る基準として公衆トイレの美化があげられると思うが、これ は、情けないと思い、市役所の公園緑地課に清掃をさせて欲しいと陳情したが、相 手にされない。さらに、都市整備部長にも交渉したが、取り合ってくれない。 やむを得ず、静岡市内の全公園トイレを写真に撮り、「静岡市内の公園トイレの 現状」と題して懇意の国会議員を通し、建設省(現国土交通省)を訪問、訴えた。す ると、静岡市役所へ連絡が入り、私の会社で市内約 50 ヵ所の公園トイレを清掃管理 することになった。最初は静岡美装の社員総出で徹底的に汚れを落とし、その後の 清掃は妻が受け持った。 その後、トイレのお掃除運動が全国的に広まってゆくこととなるが、これは 30 年 前の思い出である。 静岡市内の 公園トイレの現状 ㈱静岡美装 建設省へ提出した陳述書の表紙 昼は恥ずかしいので、早朝、男女トイレをカメラに撮って回った。 この他に社会貢献へは積極的に参加した。 ・静岡少年院生徒へのTシャツ配布と激励講演 ・アスベスト被害の国会質問…まもなくアスベスト使用は全面禁止となった ・ある政党の疑似国会での代表質問…地価変動に準じた相続時の土地評価の必要性 ・3階建木造住宅の規制緩和申請の国会質問 ・分譲マンションのスラム化対策の国会質問…超党派で研究するとの答があった ・ライオンズクラブでの社会活動(MyLifeに詳述)など 地域社会で経営をする以上、それぞれの仕事と共に、社会に貢献する仕事にも携 わることも大切と思われる。 30歳後半から40歳半ばまでの懐かしい思い出である。 178

10.総合建設業確立途中の倒産体験 新しく創立した豊建設の売上は、初年度 1 億円、2 年目 2 億 4 千万円、3 年目 5 億 円、4 年目 9 億円となり倍々ゲームのように伸びていった。 平成元年、バブル景気の真っ最中は豊建設と静岡美装、さらに、不動産部門とし て設立した有限会社ユーイックを合計すると、年商 20 億円に達していた。山一證券 から上場の勧めがあり、3 年後に売上を 35 億円までに伸ばして、二部上場をする計 画を指導してくれた。 賃貸マンションや店舗、ホテルなどの建築では、経営指導、資金作りなどから始 まり、デザイン、家相学、地相学による設計など、他社にはないノウハウを持って 営業していた。 静岡県中部地区においてもそれなりの地盤を築き、認められ、総合建設業として 「オンリーワン、地域ナンバーワン」に近付きつつあったかに見えた。 しかし、ここで大きな落とし穴が待ち構えていた。 銀行とのトラブルや手形詐欺事件に巻き込まれ、倒産したのである。 事業は、大きくなる時は黙っていても自然に大きくなるものであり、ブレーキを かける勇気が必要であることを身を持って悟った。 Column スピードとブレーキ 平成 9 年、静岡市駅南カネボー通り沿いの一等地に 260 坪の土地を購入。総額 5 億円で本社ビルを計画しました。当時の夢は美装、リフォーム、建築、土地開 発、新企画のマンション分譲、そしてM&Aや開業指導など、全国展開まで含ん だ壮大なものでした。 しかし、その基地となる本社ビル建築は、10 階建てだったため、地元の建設 反対運動に遭い頓挫。後には地元の皆さんと仲良くなり、役員の住宅建築を任せ られたり、新年会に来賓として挨拶をさせていただいたりした程に仲良くなり ましたが、その間に銀行とのトラブルや手形詐欺に遭い、2 年間の悪戦苦闘の末、 平成 12 年 5 月、51 歳で倒産しました。 会社は、大きくなる時は黙っていても大きくなりますが、拡大と経営者の「心 の器」が追いつかないと、いつか躓きます。私もそのパターンであったと反省し ています。 「売上は伸ばすものではなく伸びるもの、その時に重要なのはブレーキをかけ ること」は今の再建の仕事で特に役立つ体験でした。 以上、私の 50 年間の営業体験を綴りました。生の記録として、参考にして頂きた いと思います。 ☞全体を振り返り言えることは、一つ一つに対し誠意を尽くして仕事をすることが 出来れば、その結果がどうなったにせよ、後悔することではなく、人生体験として 糧になることと思います。 179

11.自ずと広がる再建コンサルタント体験 1~10 まで私が体験してきた営業体験を挙げてみた。 今、振り返るとこれらは全て積極的な営業だった。 この積極性が裏目となり、52 歳で倒産、全てを失うことになった。 そこでそれまでの形の世界から心の世界へと生き方を変え、自然に任せてみよう と決意、いつの間にか再建コンサルタントとして忙しい毎日を送るようになった。 〈マイライフより〉 私はせっかく、会社を辞めることになったので、今まで出来なかったことをや ろうとした。まず、本を読むことだった。ブックオフでは 1 冊 100 円で売ってお り、毎月 5,000 円の小遣いのことんどを本代にした。つまり 100 円×50 冊も買 えた。こうして今まで読めなかったものを片っ端から読んでいった。 歴史小説、経営学書やノウハウ本、法律、思想、道徳、宗教、雑誌などとにか く 100 円で買える本を乱読、いつの間にか 4,000 冊を数え、置くところに困るほ どになった。 読書三昧の日々を送っていると、友 人から会社再建の相談があり、未知 の分野だったが、私なりに体当たり でぶつかっていった。 最初はわからず手さぐり状態だ ったが、今までの経営体験や倒産体 験が生き、自信を持って再建を成功 することが出来た。 すると紹介をしてくれる方があ り、紹介者が紹介を呼び、いつの間 にか 20 年間も続けることになっ た。 この紹介の繋がりが左の人脈マ ップである。 人との繋がりを大切にし、誠意を 尽くすことにより、自然な形で増え ていくことを自信を持って広めて ゆきたい。 180

Q&A 勉強会参加後のアンケートに対する回答です。双方向で学ぶこと により、一層理解が深まるものと思います。 夏季編 第 3 章 営業活性化計画 営業とは何ですか?と問いかけた時に、様々な答えが返ってきますが、集約す ると「物やサービスを売り、利益を上げるやり方」に行き着くように思います。 そして営業をマーケティングとする考え方からは、「営業の仕組みを作ること」 に少し、前進します。 これは間違いではありませんが、「何か物足りない」と思えてきます。 なぜか?と問いかけ続け、受講生の皆さんと話し合っている内に、営業に対す る見方、考え方もどんどん変化していきました。 ・売上げは伸ばすものではなく、伸びるもの ・売上げを伸ばしてくださるのは、お客様からの暖かい心によるもの とするならば、営業とは、「社員全員の心が1つになり、調和した時に始めてで きるもの」と言うことになり、「ヒトモノカネの調和により葉が繁り、花が咲き 実を結ぶ」ことが営業と呼べる、と議論が進みました。 Q32 「売上を減らしながら利益を上げる」という方針をどのように社内外に 伝えたら周囲の理解を得やすいでしょうか。 (売上を減らすということを理解するのが難しい方も多いように感じま す。) A 売上を増やすことのみを追求する弊害を説明することから始めて下さい。 ・短期的には、売上の増加に比例して人件費や販売経費が上昇します。 無理をして販売するために売上利益率の低下を招くからです。その結果、売上高 は伸びても営業利益はそれ程伸びないことに気付くはずです。 ・中期的には、お客様からの視線が冷めることになり、売上高は元に戻りがちです。 その時に一般管理費が上昇しているため、以前よりも営業損失が増えることになり ます。この反動が恐いのです。これらを分けて説明すると理解して頂けると思いま す。 自社の分析は、3 つの目で考えて下さい。 ◉鳥の目→営業・組織・財務の 3 部門全体を俯瞰して下さい。 ◉虫の目→一つ一つを細かく見て分析して下さい。特に売上利益率と人件費比率です。 ◉魚の目→全体の流れ、将来の姿を予想して下さい。 この分析が正確に出来れば経営の樹の剪定作業が出来ることになります。 秋季編にて詳述しますので、参考にして下さい。 181

Q33 「自然と売れる仕組みづくり」は、どのようなところから取り組んでゆ けば良いのでしょうか。 「今売れている」はあるものの、「これから売れる」が分からないた め、常に不安の中にいる感覚です。 A もっともです。世の中の動きは早く、環境変化はいつも起きており、これか らの世の中を読み解くことは難しいため、経営者は常に不安の中で生きてい くことになります。 そこで私は、「流れに呑まれず流れに乗る」極意を身に付けることを訴えてい ます。つまり、どんな困難にも耐えられる運命を持つことです。 それでは運命を強くするにはどうすれば良いか? 形と心の両面から考えてください。 〈形〉 必ず黒字経営を続けることです。黒字経営を続けていれば、財務面で困る ことがありません。借入れにより、1~2年の時間を作り、その間に挽回 策を考えれば済むことです。 〈心〉 関係者全員との調和の心を持つことです。つまり、関係者と協力関係を築 いていることです。 さらに加えたいことがあります。それが真理と言われる自然界との調和です。こ れは、少しずつ理解されていくものと思います。 Q34 仕事は「得るものではなく、得られるもの」とは、お客様から得られる ということでしょうか? A 仕事は、お客様の紹介だけでは無く全ての関係者の協力により、得られるも のです。 具体的には次の通りです。 ●銀行:積極的な融資体制を整えて下さることにより、仕入れや事業拡大のチャン スを活かすことが出来ます。 ●国、地方自治体:税金を納めることにより、助成金など公的支援を受けられ仕事 の拡大に繋がります。 ●仕入先、外注先:協力してくれるだけでなく、知り合いの方や業者を積極的に紹 介してくれるようになります。 ●社員の家族:会社の宣伝をしたり、社員である夫や子を気持ち良く送り出し てくれます。 その他たくさんありますが、最大のものは社員にやりがいのある職場を作るこ とによって、社員が持てる力の何倍もの力を発揮してくれることです。 このような形で自然と仕事は増え、花が開いていくものです。 182

Q35 仕事を断らない!私もそれを実行していますが、独り自営業の為、依頼 が多数重なったり、やってあげたいが、物理的に体が1つしかない為 に、断ざるを得ない場合があります。この様な場合どのような応対をす ればよいでしょうか? A どうしても物理的にできない場合は、断ることは止むを得ないことと思いま す。「仕事を断らない!」 とは心の上で全てを受け入れる意識を持ち続ける ということです。 そうすると、自然に視野が広くなり、 「なんとかやってみたい」 と思うように なります。すると、その方法ができ上がっていきます。 人に恵まれるようになったり、自然と自社のできない部分を補うネットワークが 構築されるようになってゆきます。 私の場合は、全くの建築の素人から少しづつ広がり、土地分譲、マンション分譲 まで手掛けるようになっていきました。 Q36 武器をもった営業ですが、どのようにして武器を考えたら良いでしょう か? A まさしくオンリーワン商品やサービスを持つことです。そのオンリーワン商 品は、他社のものより異質なものです。そしてオンリーワンを作る考え方は、 経営理念に基づくものであり、本質化と言うべきものです。 建設業においては「良い家を建てることは当たり前、その家に住むことにより、 幸福が育まれる住まいを造る」など他社よりも次元の進んだ考え方です。 Q37 ある先生から利益を上げる方法として「売上を 4.2%伸ばすのと原価を 2.8%下げるのと同じ」と聞きましたがどちらが難しいですか? A 売上を上げるのは誰か?原価を下げるのは誰か? を考えれば答えが出てき ます。 ○売上を上げてくださるのはお客様の心です。 ○原価を下げるのは社員と協力会社の力です。 このように考えれば、社内の努力で原価を下げる方が望ましい形であることが理 解できると思います。 仕事の根本は仕える事です。「仕え合うと書いて仕合わせ」と読むように必ずは ね返ってきます。 お客様に対する心を認めて頂き、自然な形で売上げが増えてゆく形を考えてゆき ましょう。 183

Q38 奉仕心の営業を古川講師の体験を通して教えて下さい。 A 私は 18 歳から 23 歳までのサラリーマン時代と会社経営時代を合わせ 35 年 間も営業を体験してきました。 それらは全て私なりに考えてきたものであり、1 つ 1 つの長所、短所、ポイント など、自信を持って話せるものです。 そして、53 歳頃より現在の再建コンサルタントとして、あらゆる営業パターンを 経験、さらに多くの再建提案時の経営計画書や営業戦略作りなどを通して、様々な 営業形態に精通するようになったと自負しております。 結論として、「営業とは売るのではなく売れるものであり、その仕組みを作るの が営業計画」です。それは、「形だけでは無く、奉仕心という精神面の充実があっ て始めて成り立つ」ものであります。 そして、仕事の意味を簡単に言うと、読んで字の如く「仕える事」です。 さらに、仕えるとは人が士となると書き、士とは武士の士であります。武士は、 品性を最も重んじるものであり、その心は、奉仕心と思います。 この事から、奉仕心が究極の仕事に繋がると考えました。このことは、大変重要 なことであり、現在の再建コンサルタントの基本の考え方となっています。 それでは「奉仕の心で仕える事が仕事と定義したならば、無理な努力を必要とし ないでも経営が成り立つか?」を 52 歳で倒産した時、試してみようと思い立ちまし た。一人の身であり、とことん貧乏生活を楽しんでいるからこそ言えるのですが、 それ以来、仕事は得るのか?得られるのか?を試しております。 様々な相談事の内容は、会社では経営難、借金返済、不渡り、詐欺、差し押さえ、 個人では多重債務、詐欺や闇金被害など、実に様々な相談が寄せられるようになり、 その相談者と一緒に解決して来ました。解決と言っても、その方法は確立している 訳でも無く、自分自身で考え、全力を注ぐ毎日を送るうちにどんな難題でも解決す る自信をもてるようになっていきました。 気がつけば、ほぼ毎週 1,000Km を移動、20 年が経過、仕事が無くて困ったことは なく、適度に忙しい毎日を送ってくることが出来ました。 その結果、やはり「仕事は得るものではなく、得られるもの」という真理が実証 できたと思っています。 この私の体験を通して得たものを多くの人にお伝えすることが、私の任務のよう に思っています。 従来の営業の考え方を一旦横に置いて試してみて下さい。必ず良い結果が表れる と思います。 184


Like this book? You can publish your book online for free in a few minutes!
Create your own flipbook