14冬季編　第1章転生による人生再建(ハッピーリタイア)

経営の春夏秋冬 冬季編 ＝繋ぐ＝ 満足と 感謝心に 包まれて ハッピーリセット アンド スタート 第1章 譲渡(M＆A)・転生による人生再建 第2章 倒産による人生再建(倒産は倒して産むことなり) 295

冬季編 学習メモ 296

経営者は 2 つの人格を持っている 「人間としての人格」と「法人としての人格」である 究極の選択を迫られた時は 迷わず法人を捨てよ 再建には経営者の自覚と再建への強烈な熱意、そして生まれ変わる覚悟が必要で す。しかし、その熱意や体力が続かない場合は、「転生」つまり、他に転じて生ま れ変わることも必要です。 さらにそれも出来ない場合は、「倒産」により会社を倒し、新しい人生を産むこ とになります。無理に会社を続けるよりも全てを無くし、第二の人生を歩んだ方 が幸福であるという考え方です。 1.会社を他へ転じて活かし、経営者本人はリタイアする方法(第 1 章) ・M＆A(売却する)：会社に魅力があり、M＆A に応じる会社がある場合、売却する。 ・転生(他に転じて活かす)：経営状態は悪化しているが、後継者がいる場合、現社 を消滅させ新会社に転じて生かす 2.会社を消滅させ、新たな人生を生む方法(第 2 章) 会社を消滅させることはとても難しいものです。多くの関係者の恨みを買わずに 潰すことは、誠意と周到な準備を必要とします。 「善意総和型再建方法」の究極の再建方法です。 この 2 つの方法にて経営者を卒業、新たな人 ８. １. ２. 生を歩みます。 銀行 お客様 外注先 〈ハッピーリセット＆ハッピースタート〉 ７． 株式会 ３. 経営者は経営の仕事をする人です。 株主 社 社員 決して会社と運命を共にする必要はありま ○○○ せん。 法律でも株式会社の責任は、株主が投資し ６． ５. ４. 国・ 仕入先 た株式金額内で責任を負うことと定められて 県・町 います。 経営者 調和責任関係図にて経営者を外部の人と位 置付けている通りです。(春季編第 2 章) 調和関係図 297

イラスト挿入 298

第1章 転生による人生再建 —ハッピー リタイア— 譲渡、転生は経営人生を 後世に伝え、同時に人生再建を 考えることである 299

1.M＆A による売却 経営不安や後継者不足に陥り、経営続行が出来なくなった時、会社に特徴や魅力が あれば、M＆A という会社そのものを売却する方法です。 (1)M＆A の成立条件(mergers(合併) and acquisitions(買収)) 最近では「合併、吸収」などという言葉ではなく「Ｍ＆Ａ」という言葉により一般 的に行われるようになっています。暗いイメージはなくなり明るいイメージとなり 一つの経営再建手法として扱われています。 仲介業者が大きなホテルなどを利用、説明会が行われていることからも、これか ら益々盛んになってゆくものと思われます。 会社の内容が債務超過であってもその会社の持っている技術や営業力を求める 会社であれば、M＆A は成立します。M＆A は後継者に悩む会社の一つの譲渡方法とし て一考の価値はあり、私も積極的に進めています。 会社を譲渡するために必要な条件を 5 点挙げてみます。 ① 黒字決算を計上していること 仮に赤字決算としたら翌期は黒字とすること。どんなに悪くても、３期連続赤字 決算は避けなければなりません。 ② 誠実に経営していること 不正な経理、社長の公私混同、粉飾決算などをしていないことが最も大きなポイ ントになります。 ③ 会社の価値を傷つける隠れた瑕疵が無いこと 表面上には表れない借入や、滞納税金などがないよう、常にきちんとしていなけ ればなりません。 ④ 買い手企業に対し、軌道に乗るまで応援できること 売ってしまえば終わりではなく、売ってからでも求めに応じて協力を惜しまない こと。完全に譲渡が完成するまで、社長は買手会社の社員として残ることを、条件 にする場合が多いものです。 ⑤ オンリーワンを持っていること 独自の商品や技術、そして、優れた社員に恵まれ、優良な顧客を持っている会社 は特に注目されます。 オンリーワンの技術力やサービスを持っている会社は赤字であったとしても将来 性が評価されるからです。 この他にも様々な条件があると思います。いずれにしても日常の経営が健全に行 われていることを問われます。 300

(2)M＆A のメリット M＆A は譲渡側、譲受側共に大きなメリットがあります。 言い換えれば双方のメリットが合致した時に M&A は成立することになります。 〇譲渡側のメリット ① 長年の経営人生に区切りを付けられる ② 社長の個人保証や担保提供から解放される ③ 株式などの現金化により、経済的に潤う ④ 社員や顧客との責任を果たすことが出来る ⑤ 後継者不在、事業承継問題を解決出来る 〇譲受側のメリット ① 事業を成長させるまでの時間を節約出来る ② 従業員の雇用継続：求人の苦労が省かれる ③ 取引先との関係継続：顧客を確保することが出来る ④ 業務の拡大：既存の業務を拡大させることが出来る ⑤ その他、税務上のメリットが大きい (3)M＆A のデメリット M＆A は譲渡後の責任は全て譲受側が負う形になります。 その中で譲渡側のデメリットは社員の待遇などの心配に集約されると思います。 今まで共に汗を流してきた社員の将来に対し最大限の配慮が必要です。 (4)譲渡側の責任 譲渡側の社長は、譲渡後、譲受会社が継続して経営できるようになるまでの移行期 間は会社に残る義務が生じます。 従って譲渡すれば、それで終わりにはならないと言うことです。 経営的に順調であり、経営者として余力が残っている場合は、M＆A も立派な選択 肢に考えられます。 私は過去、建設業を経営していた時に M＆A を経験してきました。 ❖そして最近、成立したばかりの事例を次頁に紹介します。 301

〈M＆A による転生事例〉 後継者難のため M＆A にて譲渡転生 機械修理業、社員約 15 名 業界大手会社へ譲渡 この事例は新しく起業する時から、私が取締役として財務を担当してきた会社の 事例です。後継者がいないため M&A にて譲渡しました。 ■相談内容■ 創業 15 年の機械修理会社である。 私が創業時から関わり、苦しい状況の中、何とか乗り越えてきた。 創業から５年間に及ぶ赤字決算も上手に決算書を作成、借入を繰り返しながら乗 り越えてきた。 そして、リーマンショックの影響も乗り越え、黒字決算を計上出来るようになっ た。 ところが、社長も高齢化、後継者がいないことから、M＆A にて会社をどこかに引 き継がせたい、との相談を受けた。 ■M＆A 会社の選択■ 私は 30 年も前、建設会社経営時代に建設工事受注の一貫として M＆A も引き受け ていたので、それなりの知識はあり、すぐ、数社の専門会社を訪問、最も良さそう な会社を選択し、様々な書類を担当者と協力しながら作成していった。 ■M＆A 成立■ 約 2 年程掛かったが、購入に応じる会社が現われた。 ほぼこちらの要望通りの条件で応じてくれたのである。 あまりにも簡単に決まったので、こちらもあっけに取られる程だった。 それは、M＆A が成功する条件に合致していたからだった。 ◎M＆A 成立の条件 会社を丸ごと購入、吸収する訳であり、それなりの条件がある。 この会社の特徴は次の通りであった。 ⚫ 取引先が安定している 機械の修理は高い技術力が要求される。この会社のエンジニアたちはベテラ ン揃いのためクレームが無く、取引先が安定していた。 ⚫ 社長を始め社員全員一人一人がプロとしてそれなりの仕事をこなしている。 社長を含め、無駄な管理職もいない精鋭社員揃いである。 302

⚫ 社員の定着率が高い 会社の経営方針は「社員は宝！」としており、徹底的に大切にしていた。 いくら赤字であっても賞与は必ず支給していた。 もちろん借入金によりまかなったが、その調達は私の仕事でもあった。 そのため、15 年もの間、個人の都合による退職者は一人もいなかった。辞め た人のほとんどは定年や病気などが原因であった。 ⚫ 財務がキチンとしている 経理を始め、きちんと決算をしており、銀行とのトラブルや滞納税金が一切 ない。 ⚫ 総務関係も労使間のトラブルも一切起きていない 以上のように決して高収益会社では無いが、安定感抜群の内容が評価されたよ うだ。 ■M&A の今後■ 社長と社員全員そのままで株主が交替しただけであり、表面上の変化は全く無い。 社員はそのまま何事も無いような環境である。社長のみが、数年の内に引き継ぎ、 終了次第、新社長と交替していくだけである。 M＆A 方式の理想的な結果を残すことが出来た好例である。 Point M&A と転生の合わせ技 M&A については、私自身約 30 年前、ホテルの売買を通して経験していますが、 かなり複雑であり、M&A の条件に当てはめることは難しいのも現実です。 求められる会社は「優秀な社員や技術者が多く在籍している」「オンリーワン を持っている」などですが、やはり決め手となるのは「経営者を中心として調和 の取れた、経営基盤を持った会社」です。 この事例の場合は、そのままの状態でスムーズに M&A が進行しましたが、条件 が揃うことはなかなか難しいものです。 何らかの事情で数字上の問題がある場合などは、売り手会社の債務を整理、圧 縮して資産に見合う財務内容にした上で、売却する形を取る方法を用いていま す。 つまり、M&A と転生の手法を合わせて用いる方法です。 303

2.転生による人生再建方法 赤字が続き、再建の目途が立たない会社でも再建方法は必ずありますが、経営者 に存続意思がない場合は問題です。他へ事業継承をしたくても、倒産寸前の会社を 引き受ける会社はありません。 しかし、事業継承をしたい会社の多くは、このような赤字会社です。 ⚫ 手形が不渡りとなり、取引業者から問い合わせが殺到している。 ⚫ 心労が重なり倒れそうだ。 ⚫ 土地、建物、住まいが競売処分になり、妻や子供のことが心配だ。 ⚫ 税金、社会保険未納で差し押さえられた。 ⚫ 子供に譲りたいが、借金があり出来ない。など ⚫ その他、資産よりも負債が大きい(債務超過)場合 このように経営者自身が我を忘れ、パニックに陥った状態では、存続を諦め新会 社へ転じて、経営者としての重圧から解放してあげることも大切です。この人間と しての幸福な人生を取り戻すことを「転生」と言っております。 転生は 転じて生きる 読むなれば 転じた人生 感謝で生きよ 経営に苦しむ経営者に「ガンバレ！」「売上を伸ばせ！」などは禁句です。立ち上 がるよりも経営続行を諦め新しい会社に転じて生かすことも考えるべきです。 「転生」は経営意欲がないか、精神的にも耐えきれない場合に後者に譲る有効な 方法です。破産法などの法律を使わず、表面的には何事もなかったように閉鎖、前 後して新会社を設立、引き継ぎます。 〈主な転生先〉 ・兄弟、子供などの親族 ・番頭格の主な社員 ・取引先企業 その他 以上のように現社長ではどうしても続行出来ない場合に、子供や後継者に転じる 際、負債等は旧会社が持ったまま消滅させ、新しい会社へは資産部分のみを引き継 ぎます。 経営者が精神的にも健康上でも限界となり、継続困難な場合に限り用いる方法で す。悪用すると、詐欺事件になりかねないからです。 ❖「倒産」は、「会社を倒して幸福な人生を産む方法」として第 2 章で説明します。 304

〈転生の方法と注意点〉 (1)転生の方法 転生は円満に現社を閉鎖、新会社に移転していく難しい方法です。それには、知 識でなく真理の考え方を用いて進めてゆきます。 債務の支払い継続、借入金の返済問題など、あらゆる状況を相手側に立って進め てゆきます。その方法は書面に表すことが出来ないほど微妙なものですが、真理の 考え方で知識と知恵を絞れば成功していくものです。 (2)実行の注意点 転生先企業が円滑に経営できるようにするには、旧会社との関連性を疑われない よう万全の注意を払うことが必要です。ほとんどの会社では借金があるため、息子 や番頭などに継がせることをためらっていますが、転生は、そのような会社に極め て有効な方法です。 ① 旧会社と転生先会社とは、縁のないようにしなければなりません。 債務逃れの疑いをもたれるからです。 ② 転生に至る経緯は、客観的に認められるストーリーに作り上げることが重要で す。一歩間違うと、計画倒産になるからです。 ③ 新しい会社の出発の拠り所となるものとして、完全に一から出発する起業計画 書が必要です。 形の上では、この 3 つくらいですが、関係者に迷惑を掛けることには変わりあり ません。誠意ある態度が絶対条件です。 Point 転生の成功は細心の注意と善意の協力による 転生は複雑で簡単なものではありません。 商法、税法などの法律と金銭貸借などのトラブルが重なり合い、それらを紐解 き円満に解決していかなければならないからです。それには、知識と真理の両面 から考えていくことになります。 このやり方を M＆A コンサル会社に勧めてみますが、乗ってくる会社はありま せん。最初から困難であると諦めてしまっているようです。 しかし、事業を他に引き継いでほしい会社の大半は、経営困難に陥っている会 社であり、必要とされる方法と思います。 ❖わかりやすく説明するために、次頁に転生事例を紹介します。 305

〈転生による人生再建事例〉 借金過多、差し押さえ、健康不安、手形不渡りなどにより 閉鎖、長男が起業し転生再建 O 工業、業種：機械部品製造 ■依頼内容■ サラ金や銀行借入の返済不能、手形不渡りも数日後に迫っていた。加えて持病の 悪化などにより、経営続行は不可能な状態であり、前進も後退も出来ずオロオロす るばかりであった。この状態から、なんとか楽にして欲しいとの相談だった。 資金も無く税務署から売掛金全てに差し押さえがかかり、「万事休す」の状態であ る。 ■経緯■ O 工業の社長（７5 歳）は、若い頃からの持病が悪化、無理を重ねていた。資金繰 りも苦しくなっており、経理担当の奥様は深く考えず、サラ金から借り、返済をす るために別のサラ金から借りるという悪循環に陥り、多重債務者になっていた。 そして、にっちもさっちもいかなくなり、担当の税理士から私を紹介されたので あった。 ■再建方針■ 〈転生による再建〉 面談をしたところ、社長の経営続行はストレスも重なり、健康面でも不可能と判 断、現在の会社を倒産させ別会社で息子に後を継がせる形の「転生」により再建す る方針とした。 ■再建方法■ ① 長男を解雇、新会社設立 勤めていた長男を 2 ヵ月前にさかのぼり解雇した形をとった。そして長男が新会 社を設立、旧会社の閉鎖と平行して営業を引き継ぐこととした。 (たまたま連帯保証人になっていないため出来たが、連帯保証人となっている場合、 複雑なやり方となる。) ② 現会社の閉鎖 社長夫妻は高齢であり、会社倒産の修羅場を乗り切ることは困難だった。そこで 社長は入院してもらい、私が社長代行を引き受けた。 そのため、私が取締役に就任した。公的機関は役員でない限り社長代行を認めな 306

いためである。 ③ 新会社の経営計画書作成 長男が起業する会社の経営計画書を作成、取引先、仕入先等に報告、支払いなど で動揺することのないよう新会社が責任を持つことで安心させた。 ■交渉■ ①金融機関との交渉 取引銀行からの借入残高 4 行で計約 1 億円あった。そのうち保証協会付き融資は 代位弁済してもらい、保証協会へは、連帯保証人として極少額を払い続けることと した。当初、毎月の支払い額 2,000 円では絶対に受け付けなかったが、社長を同行、 誠意を示すことによって理解して頂き、白紙の振込用紙を頂いた。 法律よりも憲法の基本的人権を優先して頂いた結果であり、感謝である。 銀行直接融資(プロパー)についてもそれぞれ話し合いで処理していただいた。 ②サラ金との交渉、過払い請求 サラ金は約 10 社、計 800 万円もあった。これを全て月額 1,000 円ずつの返済とし 急場を凌いだ。それぞれ強い抵抗があったが、全て書面で一方的に押し切った。そ して息子への転生が成功してから、「過払い請求調停」により約 500 万円を取り戻 し、再建資金とした。 私への日当はこの中から頂いた。 ③税金の差押え実行猶予依頼 税務署からは、売掛金全額に差し押さえがかかっていたが、事情を説明、1 ヶ月の 差し押さえ猶予を黙認して頂き、その間に集金回収した。そして滞納していた国税、 県税、市税も誠意を以って話し合い、納めないで解決することができた。超法規的 な処理である。 ただしこれも時間が掛かった。完全に回収不能の状態を確認しないと回収放棄は 出来ないからである。 約 1 年後に国税が正式に放棄してくれ、県、市と追随して頂いた。 ◎ 閉鎖決算手続き 閉鎖の際、税金滞納については閉鎖決算が求められる。この場合、自分で作るこ とを勧めている。経理事務所もいい加減なものは作れないからであり、時間と費用 もかかる。 税務署の指導に従い作成すれば数頁の決算書で出来上がり、それ程難しいもので はない。 307

この時も、全く余裕の無い状態であり、簡単な決算書を作成して提出した。 ■住宅ローンの継続■ 会社の借入金について社長が連帯保証人になっており、自宅を担保提供していた。 当然、自宅は担保処分を免れない。しかし、住宅ローンが残っており、そのローン 担保が他銀行の競売処分から守ってくれることになった。 2 番抵当権者が競売を申請しても 1 番抵当権者の残高に充当されてしまい残らな いからである。 住宅ローン返済額は、アパートの家賃並みでもあり、住宅ローンだけは、年金収 入から確実に返済していくことにしたからである。 ■結果■ このようにして債務を旧会社が持ったまま消滅、新しい会社が仕入れ代金、地代 家賃、未払い経費など、経営して行く上で必要なものを営業権譲渡分として引き継 ぎ、利益の中から長期分割で支払っていくこととした。 その後、社長は体力を取り戻し、長男の経営する新会社で働いている。 Point 善意の総和による再建 この事例は、経理に無知な社長夫人が招いた経営破綻劇です。どん底の状態に 陥っており、あと 10 日間遅かったら、社長夫婦共に病気が悪化してどのような 結果を招いたか分からない、寸前の救出劇でした。 この夫婦を救ってくれたのは、お客様、仕入先、銀行、税務署、県など、すべ ての周囲の善意の心でした。その善意を引き出したのは、経営者夫妻の反省と誠 意ある対応でした。 つまり、関係者の「鬼の心を人の心へ、人の心から神の心へ」と引き上げるこ とが出来たからでした。 善意総和型再建方法の好例です。 308

Q＆A 勉強会参加後のアンケートに対する回答です。双方向で考えるこ とにより、一層理解が深まるものと思います。 冬季編 第 1 章 転生による人生再建 経営再建よりも人生再建を選択、人間としての第 2 の人生を歩む方法としての 「M＆A」と「転生」について学びました。「転生」の言葉はあまり良く知られてお りませんが、M＆A は一般的となりました。しかし、その売却条件が厳しくなかな か成立しないことも現実です。 そこで「転生」という再建手法を使うことによるハッピーリタイアに質問が集 中しました。 Q79 「転生や倒産も再建手法の一つである」というのは、他では聞けない、古 川講師ならではと思いました。そして、「倒産の時に、財産を隠すという 不誠実な行動を取った人程、再建は困難。周りの関係者の温かな応援が得 られないから。関係者に唯一理解して頂く方法がある。それは『至誠』の 一言である。」と教えて頂きました。 経営者として、会社を存続させるという社会的責任を負いながら、いよい よ立ちいかなかくなった時は、きれいさっぱり法人という人格を倒せば いい。そう思うと、「いかなる逆境に遭っても乗り越えられる」という安 心感が得られて、経営にチャレンジしようという勇気が湧いてきました。 A 素晴らしい感想です。このように受け止めて下さる方がいられること、大き な勇気を頂けます。ありがとうございます。 会社経営は、大きな覚悟と強い責任感を必要とします。 生半可な気持ちでは、経営者にはなれません。しかし、その気持ちが強過ぎると 自分自身の人生までを道連れにしかねません。 そこで必要な考え方は、自分自身は経営の仕事をしているという自覚です。調和 関係図において経営者が外に飛び出しているのはそのためです。 真剣に考えながらも、究極的には「人間としての人格と法人としての人格の調和」 を考えることになると思います。 つまり、法人としての人格を捨てて人間本来の幸福な人生を取り戻すことも選択 肢ということです。 ❖至誠の名言❖ 「至誠にして動かざる者はいまだこれあらざるなり 誠ならずして未だよく動かす者はあらざるなり」（孟子） この言葉は吉田松陰が使い有名になりました。 「誠」は言葉が成ると書きます。絶対に「嘘をつかない」信念が自分を救ってく れます。 309

Q80 4 年前に一緒に仕事をしていたリフォーム会社の社長が自殺未遂をしま した。みんなで会社を片付けるのにとても大変な辛い体験をしました。あ の時先生が居たら今は違う人生、倒して新しい人生を産むことが出来たの ではないかと思いました。 「至誠の人」いつでも誠実でいることが大切。「幸福の 6 つの花びら」自 分が長く続けてもあきのこない生き方。無理をしない、気負わない、飾ら ない、自然な生き方で感謝する心、和の心であること、で 6 つの花びらが きらきらと咲き、幸せな人生になると思いました。 倒産とは怖いものではないことが学べました。いつもありがとうございま す。 A 倒産の苦しみは、体験したことのない人には、わからないと思います。日々、 じわじわと精神を蝕むストレスは恐ろしいものです。 正常な判断が出来なくなり、病気になってしまうからです。 会社の閉鎖は、「会社に魅力があれば M＆A」、再建への「精神力と体力が続かな い場合は転生」、と割り切って下さい。どちらも出来なければ、「倒産による再建」 です。いずれを選ばれるにしてもハッピーリセット、そしてハッピースタートです。 Q81 責任を果たして重荷は負うな。友人が 9 人の債権者に対して一生懸命返 済しているのを思い出しました。友人に話してみようと思いました。 昨年、当社も古川先生に力を借りて再建を果たすことが出来ました。初め 私も自信があり、自分の考えを貫こうとしてどんどんドツボに入ってい ったのを常に心に留めております。 いつでも謙虚に無為自然を意識して、日常を送るようになり、凄く楽にな りました。 本当にありがとうございます。 A 「責任を果たせ、しかし重荷を負うな！」は、矛盾があるように思います が、決して矛盾にはなりません。 世の中全体を大きく眺めれば理解出来ることと思います。 経営者が最も苦しむのは、銀行からの返済責任をいかにして果たしてゆくか？に なると思います。 しかし、銀行からの借入金は一つの商行為に過ぎません。人生を犠牲にするこ ととは別次元で考えるべきことに気付くと思います。 そして、経営としての自信については無くてはならないものでもあり、あり過ぎ てもいけないもので、その見極めは大変難しいものです。 いかに自分自身を客観的に眺められるか！にかかってくるように思います。 客観視するためには、真理を学ぶことがどうしても必要です。 310

Q82 倒産に際してもやはり社長の品性が強く求められる事と思いました。 平時でもなかなかうまくいかないのに、極限の状況でも、素直に反省でき るだろうか、相手から神の心を引き出せるだろうか、と不安にもなりまし た。 知識ではなく真理。常日頃から心の中心に据えて、これからも日々学びを 深めていきたいと思いました。 A 「真理で生きる」ことは難しいことであると同時に簡単なことでもあります。 つまり、人間の幸不幸の捉え方そのものであるからです。 形を求める人生を送っている人ほど難しいことと思います。 そのような方ほど、 この考え方に対し理知的に取り組み、分析して心の整理をして頂きたいと思います。 「あ！なんだ！こんなことだったのか!?」 と思えるようになるはずです。 そして、経営者として肩の力を抜いて生きていかれるようになると思います。 Q83 借入金が多く、税金も滞納している状態でも M＆A や転生は出来るもので しょうか？ A M＆A は、それなりの優秀な会社が対象になることは致し方ないことです。 しかし、いかに借入金が大きくても税金が未納であってもそのマイナス面を 購入する会社に負担させなければ良いことです。 単純な M＆A ではなく善意総和型再建方法により、負債の処理をした上で M＆A に 臨めば M&A の可能性はあります。 しかし、相手会社はそこまでの決断はなかなか難しいようです。 M＆A の専門会社も理解しては頂けないのが現実です。 しかし、「転生」については、いかに負債が大きくても構いません。転生先に負債 を引き受けさせないからです。 旧会社は負債を持ったまま消滅、新会社は旧会社の資産(得意先、仕入先、社員) のみを受け継ぎ、営業権の形で分割支払いをしてゆきます。 その他ケースにより、様々な方法を用いて会社から新会社へ転じて生かしてゆき ます。 私は「M＆A」と「転生」の 2 つの方法を上手に組み合わせることを勧めています。 この考え方は、現在ではほとんど理解を頂くことはありませんが、調和による事 業継承として根気良く説いてゆきたいと思っています。 311

Q84 借入金返済、未払金、買掛金の分割支払いなど時には物理的にハードな局 面もあるかと思います。 そういった場面を乗り切るための平常心を保つコツのようなものはあり ますでしょうか？ A 真理に基づく教え方をすれば平常心を保つことができます。 真理に基づくとは自分自身を客観的に見つめることと戦略的な思考です。 戦略的とは、結論を定め、それに行き着くように相手の心を誘導させていくこと です。 その考え方については、81 頁、陰陽思想から真理を探る、で詳しく説明しており ます。陰陽思想とは全ての物事は陰陽両面で成り立っているという説です。 つまり、物事を一面で見ると対立になりますが、両面で見ると調和に向かうとい うことです。 Q85 必ず叶えられる努力とは？どのような努力でしょうか？無理をしないで 出来る努力に取り組む方法があれば教えて下さい。 A 努力には「必ず達成できる努力」と「どんなにがんばっても達成できない努 力」の 2 つあります。この違いを花に例えて説明します。 菊が桜をみて春咲こうと努力して叶うでしょうか？ 雑草が梅のように花見をして欲しいと願って叶うでしょうか？ この例のように、絶対に叶えられない「無駄な努力」をしないことです。 では、叶う努力とはどのようなものでしょうか？ 菊は、秋まで花の咲く時期を待つことです。桜を見て春咲こうと努力しないこと です。 芝生は、地面を保護したり、美しくするために役立てるよう努力をすることです。 きれいに咲こうと思わないことです。 しかし、日々水を撒いたり、手入れしなければ枯れたりしてしまいます。 この花の例えのように、まずは自分自身の本来の姿を見極めなければなりません。 そのためには、「自分の求める方向性はどこだろう？」「花咲く時期はいつ頃だろ う？」「無理をして悩んだり苦しんだりしてはいないだろうか？」などと、自分自身 に問いかけることです。 このように自分を見極めることが出来たならば、害虫（つまり己の欲心や邪心 など）がつかないよう、手入れを怠らないことです。この努力が正しい努力であり、 必ず達成できるものです。その見極め方は、「苦しいか楽しいか」で判断して下さい。 312