第2章 組織円滑化計画 〈働きがいのある環境〉 社員の力が重なり、 補い合う組織に 調和の取れた勢いが生まれる 119
1.調和の取れた勢いある組織 「人を疑わず組織とシステムを疑え!」と言われます。一人一人の能力を評価す る前に会社組織に欠陥が無いか? 運営方法に問題がないか?を疑うことです。 そして、孫子の兵法では「良い戦い方とは勢いに乗じて一瞬で力を発揮する」 こと、つまり兵士一人一人の行動に期待するのではなく、「勢いに乗る」ことを重 視しています。 「社員にやる気がない!」「能力が不足している!」「協調性がない!」など は、組織のあり方が原因ではないか?社内のムードに勢いがないか?と疑うこと です。 このようにヒトを生かすのは組織の成り立ちによる所が大きく「ヒトは組織次 第なり」です。 経営計画は、ヒト モノ カネの3本の枝で構成されますが会社が大きくなるに従 い、組織計画の重要性が増してゆきます。組織として動くルールが必要となってく るからです。 組織とは 組み織ることと 読むなれば 理念で組みて 人が織るなり 組織とは、「個を無視しない全体」と「全体を活かす個」とが、渾然融和となり動 く極地を目指すものと言われます。 組織一人一人を大切に考えると全体に和が生まれ、一人一人が持てる以上の力を 発揮することになり、大きな力が生まれます。つまり、組織作りとは環境作りでも あります。 Point 「働き方改革」から「働きがい改革」へ 2018 年に働き方改革関連法が成立しました。これにはいくつもの法律が含ま れ、労働条件など経営者に対して厳しく規制されています。 しかし、この法律は働く人を不幸にする法律です。 特に労働時間の短縮の問題は単純に短縮のみをした場合、会社の収益性は悪 くなり、雇用の減少に結びついていきます。結果的に失業者が増加することにな り、働き方改革は職場を奪うことになるからです。 この矛盾を解決する方法は、「労使が協力してモチベーションを上げ、やる気 を出させる」、つまり働きがい改革。それが真の働き方改革に繋がると思いま す。 本章では、組織を活性化させるための考え方や方法を様々な視点から説明しま す。 経営者の最も大きな仕事は組織を活性化させ、一人一人のやる気を引き出し奮い 立たせることです。必ず、ヒントになるものがあると思います。 120
2.組織の階層(質的量的関係) 会社は大きく分けると、経営・管理・作業の 3 階層に分類されます。この階層そ れぞれがその違いを知り、それぞれが責任を果たしてゆくことにより組織全体とし ての調和の取れた発展が生まれます。 その階層は、小企業であればある程、経営者が中心となり 3 階層全体を受け持つ ことになりますが、その区別を認識して実行することが大切です。 例えば、「この仕事は作業であり、経営者本来の仕事では無い」と思って実行す ることにより、会社の成長の一コマであることを自覚出来るからです。 それを自覚しながら実行することにより、会社組織の発展へと導かれてゆきます。 質と量の両面から考えてみましょう。 ・経営:経営機能と言われ、最高の方針を決定し、会社の進むべき方向を明らかに し、会社を取り巻く関係者の調整に努力する仕事です。一般的には取締役を指し、 その代表が代表取締役と言われる社長になります。 ・管理:管理の仕事は、経営方針により示される方向と意思に従って、組織を動か し上手に管理する仕事です。 ・作業:事務、営業、作業など、いわゆる管理される側の仕事です。 質的関係においては、経営→管理→作業の順に小さくなります。これは作業を管 理が、管理を経営が包み込むイメージです。量的関係については、その逆となり形 の上での大きさを表しています。 この 2 つの図でわかる通り、経営者が担当する経営の仕事は質的には大きな責任 があっても仕事量は小さいことがわかります。 つまり、経営者は自ら動かなくとも会社が順調に動いていることに気を配ること が重要ということです。 “人あるを知らず、知って用いず、用いて任せず”これを称して経営 3 不祥事と 言われますが、社員一人一人の能力や特性により 3 階層を考えてそのいずれかに用 いることが大切です。 121
3.組織の特質と運営形態 組織は2人以上の集まりを意味し、国家から団体、町内会、遊びの会など、様々 な組織がある中で、会社組織だけは他と違った決定的な特質があります。 それは、「組織の一人一人の生活を保障するために、常に収支計算を成り立た せなくてはならない」ということです。 会社組織の運営方法をグリット理論を使い3つに分類してみました。あなたの会 社は、どれに当たるでしょうか。 〈グリッド理論による組織心理学〉 グリッド理論とは、組織の形態により生まれる心理を、人間性と規則性をX軸・ Y軸に分け、そのバランスにより組織傾 向を分類したもので、両軸寄りと中央の 大きく3つに分かれます。 ☞強制的な組織運営 〈5:1型〉刑務所 組織 権力や威力などで、無理に管理する方 法で、刑務所の囚人管理などがこの方法 です。 この場合、規則重視、人間性無視の冷 たい組織となり、社員は自由がなく、自 主性も発揮されず、疎外感を生み協調性 は生まれません。 ☞道徳に基づく組織運営 〈1:5型〉宗教組織 一人一人の人間性を重んじ、和と秩序を大切にしていく管理方法で、ボランティ ア組織や宗教運営がこれに当たります。人間性重視の温かい組織は仲良しクラブ的 で居心地は良いものの収益性は後回しとなり、赤字経営に陥ります。 ☞規範型組織運営〈5:5型〉規範型会社組織 組織を維持するには規則が必要です。しかし、規則だけで社員は動きません。持 てる力を存分に発揮させるには、人間的な暖かみも必要です。「規則を大切にしな がら人間性も加味した組織」で規範型組織と言われ、規則と人間性が、バランス の取れた理想の組織形態です。 ☞以上、組織が与える心理を考えながら、自社の組織を分析し、反省を加えながら 規則性と人間性のバランスの取れた組織作りを考えましょう。 122
4.組織運営の3原則 会社が 1 つの生き物のように発展する組織を作るには、3 つの原則があります。 これはいかなる組織であっても守らなければならない大原則です。 (1)職務の明確化(三面等価の原則) 各社員それぞれの受け持つ仕事を職務として、何をやらなければならないかを明 確にするには、同時に 3 つの条件を満たすものでなければなりません。 ・義務=与えられた仕事は、必ず実行しなければならない という義務感を持たなければなりません。 ・責任=仕事はただ実行するだけでなく、遂行責任を負わ なければなりません。 ・権限=仕事の専門家としての地位と権限を認め、自由に 仕事のできる環境を与えてあげなければなりません。 この 3 つの調和を取ることを“三面等価の原則” と言い、組織運営に不可欠であ り、どれが欠けても円滑な運営はできません。 (2)職務委譲の限界 職務は上から下へと委譲し、委譲した人は自己の責任のためだけに実行します。 人には仕事の可能範囲があり、それ以上は委譲せざるを得なくなるためだけでなく、 委譲することにより能力を高めていくことになるからです。 そして忘れてならないことは、それぞれの委任者は絶えず見守る責任が残ること です。そのためには任せた後も協力関係を築いておくことが重要です。 (3)遂行責任と結果責任 会社経営においての責任は 2 つあり、明確に分ける必要があります。遂行責任は 仕事をやり遂げる責任であり、結果責任はその結果についてのみ責任を負うことで す。結果責任は経営者のみの責任であり、社員は遂行責任のみを負っていることを 忘れてはなりません。 いかに、責任を持って仕事を頑張ると言っても限度があります。経営者は仕事を 任せる反面、会社の存亡を左右する事態にならないよう、常に見守り、時にはスト ップをかける勇気も必要になります。任せてしまい放置したために、会社を窮地に 追い込む例は枚挙にいとまがありません。 以上、3 つの原則を守り、柔軟且つ強固な組織作りを考えましょう。 ❖次頁から組織の動かし方を学びましょう。 123
5.経営サイクルの分類と回し方 組織は経営方針に基づき計画を立て、実行、その結果を分析、次のプラン作りに 役立てるサイクルにより、運営されてゆきます。 そして、このサイクルは間接と直接、そして個人の3 つがあり、その違いを理解 する必要があります。 ・VOCサイクルは、経営者が組織作りを通して間接的に回すサイクルです。 ・PDSサイクルは、各部門が直接回すサイクルです。 ・TARサイクルは、全社員一人一人が心で回すサイクルです。 Vision Plan Thanks (方針) (計画) (感謝) See Control (分析) (統制) Organization Do Reflect Action (組織化) (行動) (反省) (実行) 経営者のサイクル 部門のサイクル 社員個人のサイクル この3つの組織運営サイクルの違いを良く理解し、それぞれが自覚を持って回し てゆくことで好循環となり、理想的な組織が形作られてゆきます。 Point PDCA と STPD と OOPA 最近は、PDCA「Plan(計画)Do(行動)Check(評価)Action(改善)」の 4 つ に分ける考えが主流になっています。 そして STPD「See(事実を見る)Think(よく考える)Plan(計画する)Do(行 動する)」などが考え出されております。 さらに OODA「Observe( 観察)Orient( 状況判断、方針決定)Decide( 意思決 定)、Act( 行動)」などもあります。 それぞれ優れた考え方と思いますが、欠点はいずれも組織作りが入っていな いことです。 つまり、経営者以外の部門責任者は組織そのものを左右する人事権を持って いないために VOC は回せないということです。 VOC は適材適所の人の活かし方であり、経営者のみが実行出来る最も重要な サイクルです。 ❖次頁にて3つのサイクルをそれぞれ説明します。 124
(1)経営者が担当するVOCサイクル 方針→組織化→統制 「組織とは、凡人にして非凡なる働きを成さしめるものである」と言われるよう に、いかにして組織を作るか? は、経営者としての最も重要な仕事です。 VOC は経営理念に基づく経営方針を実現するための組織を創り、さらにコントロ ールしてゆくサイクルです。 Ⅴ(方針) Vision 経営理念に基づきそれを実行するために考える 総合的な方針を作ることです。 O(組織化) Organization 方針を具体化するための組織を作ることです。 C(統制) Control 間接サイクル 組織の成否を見極め、修正等、見直し、統制して いくことです。 【VOC は経営者独自の仕事】 経営者の仕事とは、会社の経営をすることであり、経営とは、組織、手順、利益 などを考え、そのための仕組みを作り、事業を行い、統制していくことです。 経営者の仕事の中で絶対やらなければならない仕事は、VOC サイクルを回すこと です。なぜならば、組織化は社員を適材適所に配置することであり、人事権を持つ 経営者以外には出来ないからです。 〈人財、人材、人罪〉に分け、それぞれの特徴、人間性を慎重に考えながら、組 織編成をしてゆきましょう。(『秋季編』第 2 章に詳述) Point 会社は社長次第なり 会社の発展は経営者を中心とした組織の団結力によります。その団結力を産 むのは、経営理念であり、経営理念を強固なものにするものが経営者の品性で す。 組織編成においても社員一人一人の能力、やる気は、経営者の社員一人一人 を見る目によって違ってきます。 いかにして社員それぞれの能力や性格、特徴などを見抜き、それぞれやりが いのある仕事を与えることは経営者の最も重要な仕事です。 社長次第で、やる気が芽生え、能力もそれぞれ向上してゆきます。まさに、 会社は社長次第なり!です。 125
(2)各部門が担当するPDSサイクル 計画→実行→反省 PDS はVOC で示された計画を実行、反省し、直接的な運営を部門毎に考えるサイ クルで組織運営の要となるものです。 P(計画) Plan 長期計画と短期計画に沿った月間目標を毎月微調整を繰り返しながら、より現実 に即した計画に高めてゆきます。 D (行動) Do 計画に示された目標に向かい全力を尽くすことです。 ・報告、連絡、相談の流れが確立できているか? ・ムラ、ムダ、ムリの3ム追放が行われているか? ・業務マニュアルが作成されているか?など S(分析) See 直接サイクル 計画と実行結果の差異を分析、反省、次に繋げていきます。 ・計画通りに達成できたか?できなかった原因は何か?どうしたら達成できる か?などを分析します。 そしていかにして問題点を改善するか?全員で話し合い、その場で解決策を考 え、即実行してゆきます。 Point PDS 会議の定例化 PDS 会議とは、前月の結果確認と反省、そして来月への目標設定を社員全員 で行うことです。毎月1回定例化することにより、確実な経営サイクルの回転と 共にリスク回避となり、盤石な経営体質を築いていくことになります。 PDS会議の進行は次の通りです。 1. 先月の売上、売上利益、営業利益など収支結果の発表と反省 2. 問題点 それぞれの反省と改善提案 3. 翌月の目標 社員の意見をまとめ決定 4. 社員に対する経営講座 その時々に応じた簡単な社員教育 5. 月間賞与の支給(目標達成時に支給) 6.インフォーマルタイムに活用 PDS 会議の定期開催は、確実に一心同体になる強い会社に導いていきます。 会議については様々な形で行われていると思いますが、この PDS 会議を毎月キ チンと行うことで問題点がはっきりし、次へ進むことになります。 PDS 会議は忙しい時、暇な時に関係なく定期的にやり続けることが重要です。 126
(3)全社員が心掛けるTARサイクル(感謝→実行→反省) 経営者はVOC、各部門ではPDSの2つのサイクルで組織が運営されてゆきます。そ れでは、各々社員一人一人の行動サイクルを考えてみましょう。 T(感謝) Thanks 社員個人のサイクル ・与えられた仕事に感謝を持って取り組んでいるか? ・お客様に対し、感謝の心を持って奉仕しているか? ・社内の一員として仲間として働けることに感謝の心 を持っているか? A(実行) Action ・仕事とは仕える事の心構えを持って実行したか? ・実行とは「実る行い」である事を考えて行動したか? ・今日一日の仕事に満足感を得ているか? R(反省) Reflect ・真剣さにおいて相手に劣らなかったか? ・誠意を尽くしたか? ・今日一日に満足感を持てたか? 3 つの経営サイクルの違いを理解して取り組みましょう。 Column 感謝 実行 反省 私が52歳で倒産した時、まず頭に浮かんだのは過去の反省であり、次に出て 来たのは感謝でした。反省することにより、感謝の心が生まれ、実行する原動 力が生まれてきたのです。 それ以来、感謝、実行、反省を繰り返してきましたが、忘れてならないの は、この3つの本当の意味です。 ・感謝とは、善悪をつけないで大きく受け入れる心。 ・実行とは、相手の幸福を願って仕える事(仕事)。 ・反省とは、誠を尽くしたか?と問う心。 これらを自分の心と矛盾なく行うのは「人のためにすることが自分のために なる」「自分のために努力することが、人のためになる」という真理であった ように思います。 127
6.円滑な組織運営の3要素“報・連・相” 報告・連絡・相談は、円滑な組織運営には欠かせない三要素です。 報連相が根付いている組織は、お互いの状況がしっかり把握できるので、助け合 ったり、仕事の効率アップが図れ、トラブル回避にも役立ちます。また、新しい発 見など、仕事の可能性を広げるきっかけに繋がります。 報・連・相の違いをよく理解して使いましょう。 組織には 報連相が 欠かせぬぞ それぞれの意味 生かし使えよ 〈報告・連絡・相談のポイント〉 ☞報告:報告とは、仕事の実行後、上司や先輩などその仕事の指示者だけに結果な どを知らせる事を言います。 報告は 期待に報いて 告げること 受けた役目は 感謝で返せ ☞連絡:連絡とは、遅刻や仕事上でのミスなど、自分自身や仕事内容、職場にて必 要な情報を、その関係者全てに知らせる事です。自分の意見や予測など を織り交ぜず、事実をそのまま伝える事です。 連絡は 絡めて連なる 読むなれば 円滑化の 要なるもの ☞相談:相談とは、個人的に判断に迷ったり解決できない際に、上司や先輩、関係 者に意見を求めることです。 相談は 火と火の言で 相容れよ 熱く問いかけ 我がものとせよ Column メイワックスの想い出 私は、25 歳の創業当時、経営方針として「仕事は断らない」と「必ず報告す る」の 2 つを掲げていました。「必ず報告する」では、徹底させるために、当時、 売り出されたばかりで高価だった FAX を、自社だけでなく専属の協力業者にも 購入させ、仕事が終わったら、FAX で報告することを義務付けていました。 そのため「メイワックス(迷惑っくす)」と揶揄されたりしましたが、今振り 返ると、“報連相の草分け”だったのかもしれません。 後に山種証券の社長により、ホーレンソー運動が起こり定着しました。 128
〈報連相日報の活用〉 ホーレンソーを自然に活用出来るようにするには、制度とすることが大切です。 そのための方法として、報連相日報の活用を勧めています。 Column ホーレンソーが絆を作る 私は 3 社を経営しており、それぞれ離れた所にありました。そのため、時々顔 を出す程度でしたが、ホーレンソー日報だけは必ず目を通し、全てに赤のボール ペンで返事を書いておりました。50 枚もあり、とても大変でしたが、逆に言う とこのホーレンソー日報を大切に扱うことにより、スムーズな経営が出来まし た。 129
〈報連相の基本 話す・聴く・書く〉 ホーレンソーは「話すこと」、「聞くこと」、「書くこと」により育ちます。そ れぞれの基本を考えてみましょう。 (1)上手な話し方 いかにして相手に理解して頂けるか?話し方のコツを考えてみましょう。 ☞結論を先に述べてから簡潔に話す だらだらと経過から話す人がいますが、聞く方は苦痛でしかありません。 まずは自分の話すことをまとめ、相手に聞く耳を持っていただくため、結論を述 べてから、その経緯や理由を話すようにしたいものです。 ☞1つの話材は3分以内(50文字以内)にまとめる 興味を持って聞かせるためには、ストーリー性を持たせて流れるように話しまし ょう。そして、3分以上の話は聞いてもらえないと割り切ることです。 ☞一度に話すことは1つの話題に絞る 話の内容が、次から次へと移り、最後は何を言っているのか分からない人がいま すが、 聞く方は混乱してしまいます。一度に2つの内容を話されても理解できる はずはありません。 話すとは 言と舌とが 並ぶなり 流れによりて 活きてくるもの Column 上手な話し方の訓練 私が鈴与在社当時、高校の先輩だった早川さんと同行営業した時、衝撃を受け たことがありました。 お客様に対し、あまりにも流暢な話し方をされるのでびっくりし、どこで勉強 したのか聞くと大学でアナウンサーになるための勉強をしたとのこと。それで 納得し、話し方は訓練で上達することを知りました。 早川さんが清水エスパルスの社長としてテレビで上手に話されるのを見て、 私も奮起、当時、よく「早口すぎる」と言われていたので、それからは意識して ゆっくりしゃべる努力をしてきました。 そして、立派な内容でも「エー」「アノー」などを連発すると、聞きづらくな り、せっかくの話が台無しになってしまうことを反省しました。 特に経営者である以上、それらの癖を直す努力が必要と思います。 130
(2)上手な聴き方 「耳は二つ口は1つ。聴く方がしゃべるより 2 倍大切」と言われるように、話し上 手よりも聞きましょう。 上手な聴き方はどのようなものでしょうか? 技術面、心理面、陰陽面の 3 つから考えてみましょう。 ☞聴き方のコツ 相手の目を見ながら話す言葉の一つ一つにうなづくことは会 ・うなづく 話の第一歩です。 ・あいづち うなづいたら同時にあいづちを打ちましょう。 それも「ハイ」や「ウン」だけでは盛り上がりません。 ・おうむ返し 「へ~、それで、なるほど、すごいですね~」 ・遮らない と相手が話しやすいように導くことを考えましょう。 相手の会話の要点を捉え、おうむ返しや繰り返しをしましょう。 メモを取ることも大切です。会話の内容が締まってきます。 話の途中で遮ったり一方的に話題を変えたりすることはタブーで す。 ☞心を添えた聴き方 相手の立場になって話す背景と考え方を理解することを心掛け、相手の考えを受 け入れましょう。 ☞陰陽思想による会話 お互いの主張や想いに正邪、善悪、良否をつけないで陰陽両面から判断しましょ う。 (総集編第 3 章陰陽思想による経営具体例 14.陰陽思想による会話術参照) Point 「聞く」と「聴く」の違い 聴き上手 目と心とを プラスして 耳を相手に 向けているなり 聞くは、門の中に耳があるように消極的な聞き方です。聴くは、耳と目と心を プラスすると書くように、総動員して積極的に聴くことです。 そして「耳は 2 つ口は 1 つ」であるように、聞く時は相手の気持ちになって充 分に聞き、 話す時は嘘、偽りの無いよう誠意を持って話すことが大切です。 「聞く」と「聴く」の違いを理解して「聴くこと」を心掛けましょう。 ❖次頁は文章の書き方です。紙頼みの基本です。 131
(3)上手な文章の書き方 報連相を確かなものにするために、文章の書き方の基本を紹介します。 文章の一般的なまとめ方として起承転結という方法があります。 〈起承転結型〉 ☞起(導入) 問題を提起し、どのように考えるかを自分の立場を明らかにしながら示します。 まず表題として、全体を1行で表すことは必須のことです。 ☞承(説明) 導入部分を受け、その内容を深め、説明を加えていきます。内容が多い場合は、 箇条書きにして簡潔にまとめます。5W2Hでまとめるとわかりやすくなります。 〈5W2H 法によるまとめ方〉 1.Who だれが行うのか? 〈担当者〉 2.What 3.Why なにをするのか、その内容は? 〈目的〉 4.Where 5.When なぜそうするのか、その目的は? 〈理由〉 6.How 7.How much どこで行うのか? 誰に行うのか? 〈場所、相手〉 いつ、いつまでに行うのか? 〈期間〉 いかにして実行するのか?その方法は?〈方法〉 いくらかかるのか、その収支は? 〈予算〉 ☞転(状況の角度を変えた説明) 転は、その内容から角度を変え、別の事柄について述べることにより、より本質 に迫り問題を浮かび上がらせていくことです。 ☞結(締めくくり) 最後に自分の最も主張したいこと、訴えたいこと、そして自分の立場、気持ち、 心を印象強く主張します。 文章は 起承転結 基本とし 流れに乗せて 描くことなり ◎起承転結のパターンとして有名なのが次の例です。 ・京都四条の糸屋の妹 (起・物語の導入) ・姉は十六、妹は十四 (承・物語の説明) ・諸国大名は弓矢で殺す (転・物語のヤマ) ・糸屋の娘は目で殺す (結・物語の締めくくり) ☞この文章の書き方は基本中の基本です。是非マスターして下さい。 132
7.快適職場を作る“見える 聞こえる 言える” 快適な職場環境にするには、“見える化” が叫ばれていますが、さらに“聞こ える、言える” を加えることにより、快適な職場になるものと思います。 ☞〈見える快〉 見えるかい? 社員に会社の状況を常に見せることにより経営者意識が生まれ、やる気が引き出 されます。数字のみでなく、分かりやすいグラフ等で示しましょう。 特に経営計画書を社員と共有することが最も効果的です。 ☞〈聞こえる快〉 聞こえるかい? 社長や会社の方針、考え方がいつでも社員全員に聞こえるように心掛けましょ う。朝礼や会議なども定例化、常に呼びかけることが必要です。 ☞〈言える快〉 言えるかい? 「どんなことでも言える」、「社員の不満や意見などいつでも汲み上げられ る」、「経営に関する意見も取り入れられる職場」。その風土を作っていきまし ょう。 快適な 職場か否か 問うてみよ 見える聞こえる 言える快なり 見える化は、多くの会社が取り入れていると思いますが、見える化は会社から社 員への一方通行であるのに対し、3つの快で社員の意見、想いが反映されていくよ うに思います。 この“見える快、聞こえる快、言える快”は日光東照宮の“見猿 聞か猿 言わ 猿”をもじったものですが、この 3 つを習慣に出来る会社は明るく快適な職場とな り、どんな問題が起きようとも、必ず乗り越えていくものと思います。 〈快適な職場を作る 3 つの約束〉 1. 会社の数字をガラス張りにします。 2. 会社の方針が聞こえ、社員同士の声も相互に聞こえるようにします。 3. 思ったこと、意見などいつでも言える風通しの良い職場にします。 この3つを、社員に約束することは勇気がいります。しかし、社員一人一人が会 社発展の原動力となるには、どうしても必要な約束です。 「経営者とは、会社のリーダーシップを発揮する人」という自覚が生まれれ ば、「3つの約束は当然のこと」と考えられるようになると思います。 133
8.“やる気”を引き出す給与システム ドラッカーは「金銭的報酬についての不満は、勤労意欲を低下させる。しかし、 その満足は必ずしも勤労意欲を鼓舞しない」と言っています。 社員にとって、お金は仕事への絶対条件ではありませんが必要条件です。社員を 最大限大切にし、同志としての立場に立ち、給与システムを考える必要があります。 給与システムを会社経営の要素として経営者と社員が共有することにより、給与 にありがちな「労使の対立関係」から協調関係へ進める方法です。 給与とは 労使協調 創るもの 組織活性 基本なるもの 〈人件費比率重視の収支計画〉 給与は「給料は手取りいくら」と言われるように、生活安定が強く意識されてい ます。しかし、給与を固定給にするほど危険なことはありません。この「固定給」 により多くの経営者が悩み、業績を悪化させているといっても過言ではありません。 給与を固定給と業績給に分け、固定給部分は必ず支給できる範囲とし、会社の業 績、個人の業績により、業績給を変動するようにします。 ① 基本給 = 固定給 年令給と勤続年数給を合わせたもので、固定給となります。能力等は考慮に入れ ず、事務的に決定する給与です。安定的に支給出来る金額とします。 ・年令給:年令に応じて、固定的に支給するもので、生活給の意味合いが強いもの です。昇給は同比率で上がるものでは無く、30〜50 歳までを高い比率で上げること がポイントです。 ・勤続年数給=勤続一年毎に加えるものです。 ② 能力給 = 変動的な固定給 その人の能力に応じて、個々に決める給与です。基本は一年間に一回検討を加え、 加減給としていきますが、必要に応じ、早い時期に見直すことも必要です。この能 力給は、その人のそれぞれの能力評価に直結、給与のムダを省く効果が表われます。 ③ 業績給 = 変動給 個人の業績評価と会社全体での業績により支給するもので、一般的には賞与とな ります。月額支給分、夏季・冬季支給分、さらに決算時に分けて支給します。スピ ーディー且つタイムリーに支給することが効果的です。 この 3 つの給与を、効果的に組み合わせることを考えましょう。 ①と②の合計額を売上利益の 40%と定め、計上した営業利益から賞与として支給 する方法です。 ☞次頁、人件費比率重視の収支計画表に書き込みながら考えてみてください。 134
〈人件費比率重視の収支計画書〉 〈給与アップの仕組み〉〈人件費比率を守りながら給与を上げる〉 ・比率の分母は、売上高とし、人件費のみ売上利益として下さい。 ・比較は、今年目標÷昨年実績としてください。 ・①の労務費は、現場で働く人 ②の給与は営業や事務職 ③の賞与などは全員です。 ・N の項目は、一般管理費であり、実際の決算書では D に含まれます。 ◎人件費比率の 40%は D を指しており、N を足すことにより人件費比率は高くなっ てゆきます。つまり「人件費比率を守りながら給与を上げる」仕組みです。 D の項目で 40%を守り、営業成績から、N で還元することにより、結果として人 件費比率が上がったという形が理想です。この仕組みを社員に理解させることでや りがいが生まれ、自然に業績は上がります。 135
9.組織のスリム化“ムラ ムダ ムリ”をなくす ムラ・ムダ・ムリをなくすことは、組織をスリム化するために報連相と並び最も 大切なことです。3 ム運動などと言われ、多くの会社が取り入れています。 それぞれの意味を深く掘り下げてみましょう。 ☞ムラ・ムダ・ムリの意味と違い まず、ムラ・ムダ・ムリの違いから考えてみましょう。 ・ムラは、時間・労力・経費を掛け過ぎたり、掛け過ぎなかったりすることが混在 する状態です。冷静に分析して修正しましょう。 ・ムダは、時間や労力、経費などが掛かり過ぎている状態です。 ムダの中で最も大きなものは人件費のムダになります。また、お客様が喜んでい ないものに費やす労力や経費もムダになります。このように「ムダ無くし」の本質 は、人事戦略であり、営業戦略でもあります。 ・ムリは、その仕事を達成するための労力に不足が生じている状態です。 ☞ムラ・ムダ・ムリの関係 この 3 つの「ム」の中で、最も重要なのは、ムラの追放です。「ムラがあると、 ムリや遊びを生じるムダを作る」からです。 したがって、ムラをなくすことが、ムダ・ムリをなくすことに繋がります。 三ムには ムラをなくせば ムダムリが 自ずと消える 順があるなり ☞ムラのなくし方 ムラをなくすには、主に 2 つがあります。 ・社内的なムラ 社員のやる気のムラ…組織そのものを見直したり、標準化を進めなくてはなりま せん。マニュアルの作成や就業規則などを見直す必要があります。 ・社外的なムラ 季節変動によるムラや、取引先の需要変動によるムラなどです。会社の体制を、 売上の低い時にシフトし、売上が伸びる時は、外注や臨時社員を使い、ムダを出さ ないようにするなどの努力が必要です。 そして、取引先と密な関係を保ち、事前に需要をつかむ努力が必要です。 ムラ、ムダ、ムリは、なかなか表面に表れず、目に見えないものや気付かないも のがあります。それらを顕在化させるためには、見方、考え方を変える必要があり ます。 ☞本書 245 頁 逆も真なり…ならば 10 ポイント及び 265 頁 消極策を積極的に実行 を参考にして考えてみましょう。 136
10.組織の作り方 組織は「人に合わせる組織」と、「組織図に当てはめて配置する組織」と 2 つあ ります。人に合わせる組織を「人の組織」(属人的組織) と言い、組織図に合わせて 人材を配置する組織を「仕事の組織」(機能的組織) と言います。どちらが良いかは、 甲乙つけがたいものであり、お互いに長所、短所があります。 ☞人の組織 現在の人に合わせて作る組織で、小企業に多く強いリーダーによって形作られて いく組織です。ワンマン会社になりやすく、良くも悪くも結果が大きく分かれてゆ く組織です。また、担当者に権限が集中しやすく、発展を阻害されることにも繋が ります。 ☞仕事の組織 経営方針、目標を達成するための組織として仕事の組織に人を当てはめてゆきま す。小企業では、人材不足の傾向にあり、現実的ではありませんが、本来あるべき 組織として描くことは必要なことです。 本書では人の組織と仕事の組織の長所と短所を考えた「人と仕事の調和する組織」 として捉えています。 〈人と仕事内容の調和〉 会社組織は、「仕事を効率良くこなしてゆく仕事の組織」でなければなりません。 しかし、組織の一人一人は性格や能力が異なる人間です。組織は仕事の組織である と同時に、組織を構成するヒトの組織でもあります。ここに組織を構成する難しさ があります。 組織化するために欠かせないポイントを 3 つ挙げました。 ☞ゼネラリストとスペシャリスト(ヒトの性格の分類) 人間は 出来る人より 出来た人 良く見極めて 活かすことなり ゼネラリストは、全体を管理する者です。スペシャリストは、1 つの仕事を十分に こなす専門家として技術者や職人を指します。組織を活性化するには、この 2 つの タイプを適材適所に配置しなければなりません。 例えば、営業マンとして優秀なスペシャリストが、ゼネラリストである営業課長 になった途端に成績が落ちてしまった。などということが起こるからです。 一社員はそれぞれの部署のスペシャリストです。その社員が、主任、課長、部長 と職務が上がるにつれて、全体を管理する能力が要求されてきます。つまり、スペ 137
シャリストからゼネラリストへの成長が必要となります。 ☞ラインとスタッフ(仕事の性格の分類) ラインとは、通常の仕事の流れを担当する部署のことであり、工場や現場で働く 人たちです。スタッフとは、ラインを助ける役割を担う部署のことであり、総務、 戦略室、広報室などを指します。仕事が複雑になるにつれ、コンサルタントなど外 部導入も一般的になっております。 ☞ゼネラリストとしてのスペシャリスト(プロ経営者の条件) 経営者は、経営全部を管理するゼネラリストです。しかし、この意識が薄いのが 現実です。急激な環境変化を乗り切るには、ゼネラリストとしてのスペシャリスト、 つまりプロ経営者への意識が必要です。 〈統御の限界(一組織の人数の限界)〉 一人のリーダーは、何人までリーダーシップを取れるものか?を研究したもので、 span of control と呼ばれ、通常 5〜7 人位とされます。大企業であっても一つの組 織は 5 人程度でまとまり、係→課→部というように組織が出来上がっていきます。 1つの部署の構成員には、限界がある事を考慮して組織を作っていくことになり ます。 〈人と仕事が調和する組織の作り方〉 (1)理想の組織図を作る まず、経営方針を達成するための理想の組織図を作りましょう。 組織運営サイクル V−O−C の Organaization(組織化)です。 そして、現在の社員に合わせた組織図を作ります。この 2 つを比較すると、現実 の組織とのギャップが見えてきます。 (2)未来の組織図に現在の社員を当てはめる 未来の組織図に担当する社員の名前を書き込みます。社員数が少ない場合は当然、 一人の社員がいくつもの仕事をこなしたり、経営者が兼ねている場合もあると思い ますが、社員一人一人の特徴や能力などを考えて配置してゆきます。 (3)組織の強み弱みを把握し改善を考える 現実の組織を理想の組織に近付けるためには、どのようにしたら良いか?を考え 続けていくことになります。 ❖次頁に組織図の形をまとめてみました。自社にはどのような形がベストか? を考 えながら作成してみましょう。 138
【組織図 例】 組織図は会社の経営方針や社員構成により様々です。 製造会社、サービス会社、販売会社など業種によっても違ってくるものと思いま すが、代表例を取り上げました。 (1)一般的なピラミッド型組織 図 (2)ラインとスタッフ型組織 (3)花園形組織 (4)円形型組織 自社の社員の特徴や実態に合わせて作りましょう。 139
11.会社と社員間を円滑にする就業規則 “事業は人なり”と言われるように、労使関係は非常に微妙なものであり、一歩 踏み間違えるとあらぬ方向へ進んでしまうものでもあります。それらを予防するた めに、就業規則はキチンとしたものを用意する必要があります。 ・顧客満足と同様に、社員満足の両立を考えているか。 ・就業規則には、不測の事態に対する対処法が網羅されているか。 ・不良労働者対策と、会社保全を考えているか。 経営者にとって、最も頭を悩ませるのは人事管理です。労働基準法は労働者を守 る法律であり、尊重しなければなりませんが、年々経営者に取って、規制が厳しく なる傾向にあります。 心が通い合う労使関係に逆行するようで残念なことですが、様々な労働紛争に備 えた就業規則を準備する必要があります。 〈就業規則違反に対する考え方〉 就業規則には、社員に対する細かな規則や罰則が決められており、そこまで書く 必要があるのか? と考えてしまい、社員に徹底しない経営者も多いものです。そ こで「規則は性悪説で作成。性善説で実行する」考え方により、心の整理も出来る ものと思います。 ・性悪説:人間の本性は利己的であるので、生涯善になるための努力をしてゆかな ければならないとした荀子の性説 ・性善説:人間の本性には、生まれつき善の心が備わっているとし、それに基づく 道徳による管理を重んじた孟子の性説 ・性弱説:人間の性質は本来弱いものであるため、常に励ます必要があるとした説 〈社員に対する金言〉 ・社員は宝であり、お荷物でもある。 ・社員は働かせるものではない。働くものである。 ・社員の長所を活かすと短所は消えてゆく。 ☞松下幸之助氏は、「経営者は事にあたり、冷静に判断行動しなければならない。そ して、その上でそっと情を沿えることが肝要である」と言われました。そのような 心境は性悪説、性善説を飲み込むことにより生まれるものと思います。 140
【就業規則 例】 労使一体となって発展することを願い経営理念を掲げ、経営理念を実現するため の規則であることを表明した就業規則例です。 第1章 はじめに 【経営理念】〇〇会社の「経営理念」は次の通りです。 経営理念 この規則は〇〇会社の経営理念を実現するために、会社で働く社員や準社 員の皆さんに守っていただかなくてはならない服務規則と労働条件や、厚生 面など、就業についての事柄を定めたものです。 第2章 人事 雇用の方法や休暇などの手続き、そして退職までの手続きな ど 第3章 勤務 勤務条件や休暇手続きなど 第4章 安全と衛生、災害補償 災害防止や衛生の心構え、業務上の災害補 償など 第5章 服装規律と賞罰 守らなければならない規則、表彰、制裁、減給、 解雇など 第6章 旅費 出張旅費規定(交通費、宿泊費、日当など)の定め 第7章 福利厚生 慶事見舞規定とインフォーマル組織など 第8章 人事考課 社員の評価基準 第9章 給与 給与の構成、各種手当て、固定給と変動給の構成、賞与など 第10章 退職金 退職金の取り組み、支給基準など 以上 上記のように10章程度にまとめます。 よく命令口調の就業規則を見受けますが、会社と社員がお互い調和、協力するた めには、「ですます調」で作る必要があります。 特に大切なことは、「会社の経営目的は、経営理念を実現すること」であるこ とを明確にすることです。 〈サブロク協定〉 働き方関連法の労働基準法36条を社員、代表と締結することにより、時間外労 働、休日労働の規則を適用しやすくなり、ハローワーク等で募集するには、どうし ても必要な協定です。 ☞このように就業規則は経営者と社員が一体となるために作成するものです。 社員は使うものとして対立とみるか?共に助け合う仲間として調和とみるか? により、作成の姿勢が違ってきます。助け合う仲間として作成したいものです。 141
12.組織の基地:風水理論によるオフィス配置 私は、25 歳より 52 歳まで建設会社を経営しましたが、多くの住宅や事務所の建 築に携わる内に、間取りと人生の因果関係に興味を持つようになりました。 特に競売物件など、不幸にして手放した家を購入した方からのリフォームを依頼 されるにつけ、家相というものの重要性を研究するようになり、家相学に基づいた 設計に取り組んできました。 家相は確実に存在しており、間取りを見ればおぼろげながらもその家の状態が見 えてくるほど重要なものです。 平安京(京都)や江戸など、昔から栄えてきた都市は風水理論により設計されて おり、その考え方を住宅設計に取り入れた学問が、スモール風水と言われる家相学 です。 家相学は、気象衛星学、天体物理学、心理学などがミックスしたような学問であ り、決して迷信で片付けられるものではありません。そして家相学は、事業相とし ても活用されるものです。 〈自然との調和を考えた事業相〉 特に会社が円滑に動くためのオフィス配置はとても重要です。私は建設会社を経 営していた時、土地分譲は風水、一般住宅は家相、事務所は事業相に基づき設計し てきました。社長室、経理、営業、応接室など、1 つ 1 つ位置を指定して設計して いたほどです。 家相は「幸福な住まい造り」、事業相は「繫栄する事務所造り」と経営理念を掲 げていたからです。 吉方位一覧表 部所 位置 内容 社長室 北西 社長の威厳を保つと言われる太極方位 玄関 東南 千客万来と言われる明るい方位 営業 東 活発なエネルギーを得られる方位 総務・経理 北 落ち着く場所の方位 書庫 北東 鬼門と言われ、さえぎりたい方位 水廻り 北側 北側の業務を妨げない場所に収める ☞この中で、社長室や社長机の配置は特に重要です。私は「陰陽五行講座」を開い ており、事務所の移転時に気になる「方位」「年廻り」についても説明していま す。次頁にその中の事業相のページを載せましたので参考にして下さい。 142
今月の事業相ワンポイントアドバイス 社長室(机) 事業の盛衰を決める・・・ 事務所や工場、お店などは必ず、中心になる場所があります。それを事業相では『大 極』と呼んでいます。事業の盛衰はこの『大極』に何を置いているか、はたして、会社 の中心になるべき人物が位置しているかどうかがポイントとなります。 ☆『大極』にはその会社の中心人物を!! 『大極』に社長室を構えると、社長の威厳、貫禄が強まり、社員が自然と協力するよ うになります。逆に『大極』に厨房、階段、通路があると、まとまりのない会社となり、 衰退していきます。 ☆『大極』はどこにある? 事業発展の鍵を握る『大極』はその建物の「中心又は北西」と なります。昔のお城の間取りを見てみると、その中心となる天守 閣は必ず、『大極』に位置しています。この事からも、昔からこの 事業相の理論により、設計がなされていた事が分かります。 ★事業相って何・・・? 努力しても努力しても、いっこうに事業が伸びない商売が繁盛しない経営者がいま す。一方では、それほどの努力をしなくても、順調に繁盛していく経営者もいます。こ の違いはどこから来るのでしょうか? もちろん、業種や資金力、経営能力の違いなどによる所が大きいのは当然ですが、ど うもそれだけではないようです。 自然と調和という観点から『家相学』が生まれたように、事業にも同じように自然と の調和、即ち『事業相』というものが存在しているのです。 玄関の位置、社長の場所、営業、経理にも、それぞれポジションがあり、その場所に それぞれが位置することにより、商売や事業が発展していくと言われています。 事業相は、家相と同様、自然のエネルギーと調和することを教えてくれます。 一般的には風水と言われ、日本の主要な都市設計は地相学、住宅は家相学と言わ れ、重要な学問でした。戦後になり、迷信扱いされるようになり衰退しましたが、 私の再建において、その事務所の間取りを見れば、その経営状況が判る程、確かな ものです。 143
13.事業の拡大、移転時に考えたい運勢・年廻り 人生は宇宙のリズムの中にあることを考えたことはないでしょうか? 長い経営人生においては、事務所の移転や事業転換などは必ず起こります。 ・会社の規模拡大・縮小による時 ・外部の影響、都合により移転する時 などですが、どうしてもその年と方角が気になるものです。 ・どちらの方向へ移転するのが良いだろうか? ・今年は果たして移動しても良い年廻りだろうか? ・事務所の配置(事業相)が気になる などです。 〈方位と年廻り〉 方位や年廻りは迷信のようですが、迷信とは言い切れない部分もありそうです。 この科学的根拠はあるのかどうか?私はずっと考え続けていますが、「私たちには 見えない宇宙の力が働いているため」と思っています。 天体に思いを馳せながら考えてみましょう。 私たちは、太陽系の中の地球に住んでいます。地球は、水星、金星、火星、木星、 土星と共に太陽を中心としてそれぞれ自転公転により回っています。 それぞれはどのくらいのスピードで回っているか、考えてみて下さい。 地球の円周は約 4 万 km です。すると時速 1,666 ㎞(40,000km÷24 時間)=1,666 ㎞)で動いています。これを 60 分で割りさらに 60 秒で割ると秒速 463m(1,666,000m ÷60÷60=463m)は音速(350m)以上の猛スピードで動いていることになります。 しかし、実際は静止しています。なぜか?引力に引き付けられているとしか考え られません。もし引力、重力がなかったら、地球上のありとあらゆるものが吹き飛 んでしまいます。 この引力、重力は、私たち人間の人生にまで影響を与えているようです。 そして、生まれ年により、木、火、土、金、水の各星の位置関係により、本命星 が割り当てられました。 1 白水星、2 黒土星、3 碧木星、4 緑土星、5 黄土星、6 白金星、7 赤金星、8 白土 星、9 紫火星の 9 星です。 そして、それぞれの相生関係、相剋関係により、バランスを取っています。 この仕組みを知り、自然と調和した人生を送ろうとする考え方から方位や年廻り が生まれました。 私は 40 年程前から学び、建設業、不動産業において移転時期、方角の相談に乗っ てきましたが、決して迷信ではないと思っています。 ❖現在、陰陽五行講座にて学んでいますので、是非参加して下さい。 144
組織円滑化 10 訓 1. 個人を疑わず、組織とシステムを疑う 「組織の力」は平凡な社員を非凡な社員へ導くからである。個人を評価する前 に組織とシステムの良否を疑うこと。 2. 完璧をはき違えない 不完全を容認することにより、調和の取れた完璧な組織が育つからである。欠 点を認め調和を図ること。 3. 一心同体となった調和の取れた組織を作る 組織の和は求めるものではなく、生まれるものだからである。そのためには、 共通の考えを経営理念に定め、社員の心を一つにまとめること。 4. 快適職場を作る 快適な職場は風通しの良さから生まれる。そのためには、見えるかい?聞こえ るかい?言えるかい?と問いかけること。 5. ホーレンソウ(報告、連絡、相談)が育つアルカリ土壌を作る そのためには、どんなことにも「アル(有る)かもしれない」「カリ(仮に)やっ てみよう」と否定しないでやってみること。 6. ムラムダムリをなくす ムラをなくすとムダやムリがなくなる。この順序にて取り組むこと。 7. 全ての情報に情け(なさけ、おもいやり)を持たせて発信する 会社を発展させて下さるのはお客様や関係者の暖かい善意の心である。その心 を得るには、常に相手の立場に立ち、同じものさしを持つこと。 8. 仕事の出来る人と人間が出来た人を分けて配置する 仕事の出来る人は、業績を上げる能力を持つ人。 人間が出来た人は、人をまとめる能力を持つ人である。 9. 仕事は忙しい人に任せる 忙しい人は、責任感と達成意欲を持ち、時間内にやり遂げるからである。 10. 人と人との関係は、全ていい加減を保つ “いい加減”とは、互いの調和の心により生まれるものだからである。 145
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Q&A 勉強会参加後のアンケートに対する回答です。双方向で学ぶこと により、一層理解が深まるものと思います。 夏季編 第 2 章 組織円滑化計画 働き方改革が叫ばれていますが、それは形の上のことです。人は形では動きま せん。心で動きます。いかに自立性を持ち、やる気を出して気持ち良く働くか、 つまり、働きがいある職場を作ることこそが、経営者の仕事であり、真の働きが い改革と言えると思います。 経営者として、最も悩むのは、この組織をいかに円滑に回すか?です。最も理想 となる経営は、無為自然に行き着くものと思います。多くの質問と回答により、人 の使い方、動かし方など多くの気付きを得られることと思います。 Q27 「人を信じると騙される」「人を疑えば世の中暗くなる」その二つの言葉 を 1 つとして「信じないで疑わない」という言葉を意識すること…… 信 じてみないと物事の始まらない自分にとってはとても難しい取り組みの ように感じます。このことも日々、意識、訓練すれば身につくものなので しょうか? A これは世の中の真理を学ぶことによって身に付くように思います。 世の中は見えるものと見えないもの、明と暗、時間と空間など必ず2面で成 り立っています。 この真理が理解できるようになると、「信じないで疑わない」心が分かり始め てくると思います。 会社経営において「信じないで疑わない心」の実践例を挙げてみます。 ・「売買契約書」は必ず取り交わします。 ・銀行からお金を借りる時は「金銭消費契約書」を交わします。 ・人を採用する時は「雇用契約書」を結びます。 これらは信じないから交わすのではありません。習慣として行っています。 このように考えてはいかがでしょうか? Q28 人の見分け方と退職理由について教えて下さい。 A 人財、人材、人罪の判断は、非常に難しいものです。 本人の資質に原因がある場合だけでなく、経営者の品性や会社のやり方が原 因でやる気が無くなり、人罪となっている場合もあるからです。 退職理由は、次の原因が考えられます。 147
〈退職理由〉 1.営業なり、現場の仕事なり、仕事が厳しすぎるため これは、その人自身に問題があるか、仕事内容が合わなかったかで、ある程度や むを得ないものと思います。但し、人間関係の場合は、そのままにしておくことは 許されません。人事制度や会社組織そのものから見直す必要があります。 2.給料と仕事の厳しさとのバランスが取れていないため これは、社員のわがままか? あるいは、会社の業績が悪いためか?逆に業績が良 いのに還元されていないのか?のいずれかです。 仕事の内容にムラ、ムダ、ムリがないか、あるいは教育が施されていないのか、 再検討すべきです。 3.会社の将来、あるいは自分の将来に「夢」が持てないため この場合の多くが会社、それも経営者に問題がありそうです。経営者自身に夢が あり、それを語り、社員と心を1つにすることができれば、社員は人財に育つので はないでしょうか? これらの退職理由の内、最も問題なのは3です。会社の将来への不安、経営者と 社員の溝などは、経営者として最も注意すべきことと思います。 なぜなら、1 と 2 が不満であっても、3 の経営者との一心同体の心が育てられれ ば、社員は簡単にはやめないものです。逆に一緒になって会社発展に尽くしてもら えるものだからです。 人間の中で最も素晴らしい人の行いは、“人の心の奥に美しい燈火をつけて歩く こと”いう名句があります。 Q29 人間の持っている 3 つの心の中の神の心を引き出すには、どのようにし たら良いか詳しく教えて下さい。 A 人間は、「人を思いやり助け合おうとする神の心」「自分中心に考える人 の心」、そして「人を恨み憎む鬼の心」の3つを持っており、この3つの心が くるくる回ったり、出たり入ったりしております。 したがって、根っからの悪人はいません。また、全て聖人君子のような人もおり ません。つまり、相手によって神になったり、人になったり、鬼になったりし て、争っているのが人間界です。 会社経営において鬼の心では円満な話し合いは出来ません。どうしても神の心に 引き上げながら、話し合いを進めていかなくてはなりません。 そして、どのようにしたらいいか?とのご質問ですが、一言で言えば「経営者の 品性を向上させていくこと」に尽きると思います。徐々に理解されてゆくと思いま すが、春季編第 3 章経営者の品性が参考になると思います。 148
Q30 様々な考え方を持つ社員の意識を、どのように改善させていくか? .7 A 社員の心を1つにして同じ目標に向かわせる、つまり「一心同体」となるこ とは極めて難しいことながら、どうしても達成しなくてはならないもので す。 私が再建に際し、「一心同体」になるために用いている方法は次の通りです。 1.経営理念の確立 全社員の心構え、仕事への考え方、お客様との向き合い方などを理念として 確立します。 2.経営方針の明確化 少なくともその一年間の方針と成果目標などを明確にします。 3.経営計画の策定 組織、営業、財務の3部門に分けてそれぞれ計画を策定します。 ◎組織円滑化計画 ① 社員の分類 人財、人材、人罪と分類し、人材を人財へ引き上げる努力をしながら人罪は解 雇の対象にすることも考えていきます。 ② 働き易い組織作り 一人一人の性格と能力、やる気などを考えて組織の再編成を断行します。 つまり、働きがい改革です。 ◎営業活性化計画 ① 営業に対する考え方と自ずと売れる仕組みを説明します。 ② 社員が各現場において、「この時、社長ならどうするだろうか?」と考え る基準(マニュアル)を明確にします。 ◎財務健全化計画 ① お金の流れと利益の上がる仕組みを理解させます。 ② 社員に対する報酬体系を営業利益3分割制で説明します。 4.PDS 会議の定例化 毎月必ず開き、全員で討議することにより、少しづつ心を1つにしてゆきます。 このような形で経営の方法を、具体的に示しながら、経営者自身は品性向上に 努力してゆけば、自然に会社は新幹線型経営となり、急成長してゆくものです。 149
Q31 おかげ様でとても忙しく売上も安定してきております。人を増やすタイミ ングについて教えていただければと思います。 A ある程度大きな会社になれば、組織戦略として採用人数を決めていきますが、 小さな会社の場合、単純に考えられないものと思います。 増員のタイミングとしては、 〇 事業の拡大に伴い、仕事量をこなせない時 〇 新しい事業を考え増員するとき 〇 現在の社員を入れ替えたい時 〇 求めている人物に巡り会えた時 などと思いますが、小企業であればあるほど、その人の能力、人間性、社員との 相性などにより、採用を決めていくことになります。 つまり、属人的組織にならざるを得ないものです。 そして会社の状況のみならず、環境の変化に敏感にならなければなりません。特 に、昨今のように将来が見えない時にあっては、慎重に考えなければならないもの と思います。 私は、採用に当たって、面接に立ち会うことが多かったり、現在の社員の能力な どに対して意見を求められることがあります。その時、私の見方とその経営者の見 方と違う場合が多いものです。 経営理念や哲学が確立していない経営者は、どうしても自分自身の主観でみるた め、誤った見方をするものです。経営者として、人を見る眼を養う必要をいつも感 じます。その眼は、形ではなく、その人の本質を見る眼を養う必要があるように思 います。 150
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